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期間限定「DFF」、「DdFF」、「FF8」妄想だだ漏れブログ。 の筈が「進撃の巨人」にも手を出した腐のブログ。 初めての方はカテゴリーの『first』をご覧下さい。
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 とある輪廻。
 ある日の探索。
 パンデモニウム城にお気楽な声が聞こえてきた。
「最初こそ「1人で戦うって大丈夫か?」とか思ったんだけど、今は「俺が助けてやらなきゃ」って思う様になったわ」
金色の輝く毛並みを持った尻尾がひらひらと揺れ、持ち主の声にまるで相槌を打つかのようにラグナの目の前をかすめる。
 両腕を頭の後ろで組み、のんびりとした足取りで城の中を闊歩する二人。
 さっきまでもう一人ここにいた人物、スコールはつい先ほど戦った宿敵レベルのイミテーションに辛くも勝利したものの、最後に食らった攻撃に耐えきれず、デジョントラップに落ちてしまった。
 この城の構造は理解しており、しばらく進めばどこかに転移されているだろうと踏んだジタンがとりあえず城の中を探してみようと歩き始め、ラグナもそれに従い、現在に至る。

 さて、その途中。
「確かになー。スコールって何かこっちが守ってやらなきゃいけない気になるんだよな」
 同じくラグナもお気楽な空気のまま、色合いの派手な城の廊下をきょろきょろ眺めながら進んでゆく。
 ジタンにとってラグナと二人でこうして話をするのは久しぶりの事だった。
 以前、ラグナがコスモスの仲間達と合流する前はよくスコールと一緒に居たジタン。その頃からスコールに対してジタンは守ってやらなきゃという気持ちになる事が多かった。彼ははじめから突き放したような言葉で仲間達と距離を置いていたが、それは表面的な特徴でしかなかった。一緒に探索に出かけ、共に過ごす時間が長くなるにつれてジタンはその事に気がつき始めた。ただ、言葉が少し足りないだけ。ただ、目的だけを追い続けているだけ。
 そう思う様になってからは自然にスコールをサポートできるようになり、スコールも最初こそ「余計な事をするな」と言っていたが、今はすっかりジタンの行動を理解し、それを甘受している。
 ジタンにとってそれは仲間に対しても同じ行動の一つであり、彼のモットーをそのまま言動にしたものであった。しかしそれがスコールの持つ空気を和らげてきた事だとジタンは確信している。
 そうした日々の中、ジタンはすっかり「スコールを守るのは自分」だと知らぬ間に思っていた。
 ラグナが合流し、スコールと共に行動するまでは。

「へぇー。俺はレディじゃないからそこまで守って庇ってって感じじゃないけどな」
 いつもの口調でひょいと振り向き、ラグナを見れば、
「そうか?」
 どこか珍しそうな顔がこっちを見ていた。
「そりゃそうだろ。一応男だし、戦士の一人だし」
 まぁ、ちょっと危なっかしいけどな、と付け足すと、
「でもジタンってそういう感じで守ってたんじゃないのか?」
「へ?」
 思わず声が上ずった。目の前の男は「何を言ってんだ?」と言わんばかりに、当たり前の事を差す様に続ける。
「俺は皆と会ってそんなに長いわけじゃないけど、でもスコールを見ればなんとなくわかった。ずっとジタンに守られてきてたんだなって」
「――」
 思わず言葉を飲み込んだ。いつの間にか足を止めていたジタンに、
「ジタンはたぶんあいつの事をちゃんと理解してやれてたから、スコールもお前に任せてたんじゃないのか?」
 そうなのだろうか。
 ジタンとスコールとラグナ。この3人で探索をし始めてしばらく経つが、スコールの行動はあまり変わる事が無かった気がする。いつもの様に彼をサポートし、それにラグナが混じる。そんな感じだと。
 しかし、ラグナはそう見ていなかったようだ。後から来た人物の方が元からいた者達の関係性をあっさり見抜く事が出来るとは聞いたことがあるが、果たしてこの事であろうか。
 自分の記憶を手繰りながら考え事を続けるジタンに、ラグナも足を止め、
「俺もちゃんとあいつを守ってやりたい」
 少しだけトーンの下がった声がジタンに届く。
 はっとその声に己の世界に没頭しかけていた意識を戻し、ラグナの顔をまじまじと見つめる。
 そこにはさっきまでの「年齢を気にせず何でも気楽に話せる仲間」としての彼ではなく、一人の保護者の様な神妙な顔つきの彼がいた。
 己の右手で拳を握り、目の前で開いたり握ったりをゆっくり繰り返しながら、
「俺がそばで守って支えてやりたいんだ」
 ゆっくりと握られていた手を下ろし、小さく息を吐く。
 その言葉の意味をジタンは正しく理解した。
 ラグナは自分の様に仲間として守るのではない。
 しかし、その意味をあっさりと掴んでしまったために、一瞬胸の中に痛みが走る。
 これまでは自分が守ってきていたのだ。
 自分だけがスコールの気持ちを理解出来ていたのだ。
 それなのに。
「そっか、ラグナはスコールが一番大事なんだな」
 解ったような声でそう呟くジタン。その言葉で先程気付きそうになった痛みの原因からジタンは目をそらした。
気がついてはいけないと、ひどくそう思ったのだ。
 そしてなお目覚めようとするそれを振り切るために、再び軽く伸びをしながら歩き出す。
「あ、待てって」
 立ち止まっていたラグナがいつの間にか己より先に進んでいた事にようやく気付き、慌ててこちらも再び歩を進める。

 先程とは全く違う話をあれこれとしながら進む二人。
 そして緩やかで短い坂を上った先にある、柱の立つ少々開けた部屋にたどり着いた。
「スコール!」
 黒い服に茶色の髪。
 どうやら深く怪我を負っている様子はなさそうなスコールがその柱のそばに立っていた。
 手の中にあった愛用の武器はすでにない。
 たった今デジョンから解放されたのであろう彼がラグナの呼び声に気が付いた。
「ラグナ、ジタン」
 その声に振り返れば、
「大丈夫か!怪我は?」
 スコールを見つけた途端駆け出し、彼の頭や肩に手を伸ばして怪我がないかとやかましく見聞を始めるラグナ。
 ジタンの目の前で親馬鹿の如く心配を吐き出すラグナに、
「大丈夫だから」
 と、手の中に小さな光を呼び出した。
「悪い、スキル使うぞ」
 ジタンを見、彼の頷きによる是の後すぐに、手の中に光を呼び出しケアルを発動させた。
 どうやらスコールは見た目にこそあまり深く怪我をしていなかったようだが、その判断は間違っていたようだ。
 発動した魔法のおかげで傷を治癒し、体の軽くなったスコールが軽く小さな息を吐く。戦う前まで回復とはいかないものの、もう問題なく戦えると思った瞬間、
「じゃ、次の敵は俺とジタン担当な」
と、ラグナの手がスコールの片腕を掴む。そのまま己の肩に回し、もう片手であっさりと横腹を支えてしまった。
「離せ!」
「駄目」
 思ったより強い力で握られ、また支えられている手は今のスコールでは振り解くのは不可能だ。
 じろりと睨むスコールを全く気に留めず、
「じゃ、行こうぜ」
 ジタンは二人の、というよりラグナの行動をただぽかんとした顔で眺める事しかできなかった。
 しかし、そのままの姿勢で歩き始めたラグナに気が付き、
「ラグナって過保護だなー」
 軽くからかえば、にっこり笑い、
「いいの。お前に負けるわけにいかないからな」
 やっぱり自分が感づいたラグナの「守る」という意味は正しかった。
 そう思い、今度こそジタンはついさっき感じた痛みの原因に心の中で静かに向き合う。
『俺もスコールを守りたいのかもしれない。スコールだけを』
 それは未だ曖昧で、形の無いものではあったが、ジタンの心にはまるでそこにあるのが当たり前であるかのようにしっくりと嵌まった。

「なら、俺も負けないぜ」
 パンデモニウム城の中でその声は誰にも聞きとられる事無く、小さく零れ落ちた。
 しかし、その声の主はどこか満足げな足取りで先を行く二人を追いかける。
 今の気持ちがどこに向かうかはジタン本人にも未だ解らない。それでも今は、この小さな痛みを忘れないようにしよう。
 そう思ってパンデモニウム城を後にした。


 

※4/22公開。4/30改訂版として再up。それにより1話完結に変更致しました。

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秩序の聖域。
その名のとおり、少しだけひやりとした清浄な空気に満たされた場所。
「ひずみ」と呼ばれる「場」を探索し続ける秩序の戦士達の一人であるスコールが、珍しく探索を中断したのには訳がある。
途中で合流したライトニングに「手合わせ」を頼まれたのだ。わずかに思い出した記憶を元に自己紹介をしてくれた際、彼女は現役の軍人である事を告げていた。スコールも傭兵として己の技を磨いてきた記憶があるため、似たような立場を感じたと同時に、実力者の一人である相手との手合わせはある種興味深いものと感じていた。
しかし、彼女は意外な面を持っていた。
それを心底思い知ったのはスコールではなかったが。


軽々としたジャンプを繰り返し、自分の放つ技を避けながら肉薄する剣捌き。その名に相応しく雷系の魔法を組み合わせた攻撃が的確にスコールを狙い打つ。
勿論スコールもその動きや彼女の動作を観察しながら魔法を放ち、弾幕を張ってゆく。相手がそれにひるむなど到底思っていないが、少しでもこちらの動きを読みづらく出来るならそれに越した事はない。
「どこを見ている!」
鋭い声と共に振り下ろされる攻撃は弾幕を切り裂く。しかしバックステップでわずかに距離を開け、
「これで、終わりだ!」
魔力を帯びた剣先を着地する彼女に向けて走り出す。それをギリギリ避けきった彼女の手には水魔法が練られている。
いつの間にオプティマをブラスターに変えていたのか、まさに目の前に浮かび上がったその巨大な水魔法を食らい、スコールの視界は全てそれに塞がれてしまった。
そして再び雷撃が襲う。今度こそ逃げ切る事は出来なかった。
手合わせと言ったが、お互い真剣さは宿敵と出会った時と変わらない。スコールもライトニングもそれを望んで戦っている。
しかして今、その決着がついた。
「うぁぁぁ・・・・・!」
雷撃により吹き飛ばされた体を何とか整えるも、着地でバランスを崩してしまうスコール。
「スコール、大丈夫か」
そんな彼に近づき、すっと白い手が伸ばされる。見上げれば「少しやり過ぎたか」といった、心配するような視線が己を見つめていた。
「ああ」
その手を取る事無く立ち上がり、手の中にかろうじて残っていた剣を異空間へ消し去れば、
「なら良い。良い勉強になった」
別段彼の行動に気分を害する事も無く、いつものクールな彼女が同じように剣を手の中から消滅させる。
「聞いたとおりだな、思わず本気で戦ってしまった」
「?」
『聞いたとおり、だ?何を、誰に?』
スコールの肩に手を遣り、小さく治癒魔法を呟くと、やわらかな光がスコールを包み込む。ライトニングの発動した「ケアル」がスコールの疲労を先程いくつも作った怪我と一緒に消し去ってゆく。
「ラグナだ」
スコールの目線で彼の伝えたい事を読み取ったのだろう。わずかに視線を上げ、スコールの顔を覗きながら、
「傭兵をしていたから戦い慣れてると。ずいぶん褒めてたな」
と、不意に伸ばされた手が彼の深い黒茶の髪を梳いてゆく。先程戦っていた人物とは思えないほど丁寧な仕草。
スコールと言えば、いきなり普段の彼女からはなかなか見る事は無いであろう行動が、まさか自分相手に行われるとは思いもよらず。
彼女の台詞を理解するどころではなくなってしまった。
『俺は子供か?と言うより何故ライトニングがこんな事をする?オニオンにすらこんな事をするところ見た事無いぞ』
冷静になればただ相手の髪を梳きつつ、頭を撫でているだけだ。
しかし、母性の強そうな優しい言動の目立つティファや女の子らしい細やかな気遣いの得意なユウナとは訳が違う。相手は常にクールビューティーを地で行くライトニングだ。
そして、スコールは殊更子ども扱いを嫌う子供だった。
その手がゆっくりとスコールの頬に伸ばされる。そのままゆっくりと頬を撫で、
「綺麗な目だな」
まっすぐに視線を合わされ、気がつけばずいぶんと距離が近くなってる。いや、近すぎる。
すっかり固まってしまったスコールにゆっくりと近づく彼女の顔。
と、
「ライトニング!ストップ、スト~ップ!!」
二人の激しい手合わせを見学していたラグナが二人の間に割り込んだ。それも思い切り両手を使って引き離す。大人気ないことこの上ないこの男の行動に、流石にやりすぎたかと思いながらも楽しくて仕方が無いのだろう。クスリとライトニングが笑みをこぼす。
「本当だな。ちょっとスコールを構っただけで飛んでくるとは聞いてたが」
「ちょ、俺からかわれたの!?」
引き離した手をそのままスコールに絡みつけ、ライトニングを悔しそうに見るも、
「ま、今日はここまでにしてやる」
相変わらず楽しそうなライトニングは、再びスコールを見、珍しくにっこりと口角を上げて笑い、
「今度はもう少しゆっくり相手をしてもらうからな」
「駄目!スコールは俺の!」
ラグナの腕の中のスコールは未だ現状について行けず固まったままだ。
『ライトニングは手合わせの事を言ったんだろ?しかし、珍しいものを見た』
何とか思考を整理するスコールに、
「さて、少し休んでからこの先のひずみにいくぞ」
さっきまでの様子が嘘のように踵を返す彼女。
相変わらずラグナはスコールを離さない。それどころか腕の力はなおも強くなるばかりだ。
「ラグナ、そろそろ離せ」
地を這うようなスコールの声に、一瞬びくっと肩が上がる。
「いくぞ」
「・・・おう」
やっと開放されたもつかの間。
「でもお前は俺のだからな」
子供のようにふてくされている様で目線だけは真剣な彼に思わず溜息がこぼれる。
『一体何なんだ、二人とも』


戦いの合間の小さな悪戯。
それはまだ始まったばかりだった。
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