期間限定「DFF」、「DdFF」、「FF8」妄想だだ漏れブログ。
の筈が「進撃の巨人」にも手を出した腐のブログ。
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もう、どれくらい探索し、戦いを続けただろうか。
時間の流れの不明確なこの世界に召喚され、どれほどの時間が経ったのだろうか。
目の前の燃え盛る炎を眺めながら、スコールはいつの間にか過ぎて行った日々を緩慢に思い浮かべていた。
彼の時間間隔でそろそろ夜明けが近いこの一時。
今テントの中で休んでいる仲間達ももうしばらくすれば起き出す頃合だろう。
と、顔を上げれば目の前のたき火を挟んだ先にあるテントから、ぼんやりとした表情のラグナがのそのそと大型のクマの様に這い出してきた。
「あ~、スコール、おはよ……」
大きな欠伸と共に間延びした挨拶をしながら長い髪を手ぐしで無理矢理まとめ始める。
器用何だか不器用何だか。
彼はスコールの呆れた目線に気付かずに、寝ぼけたまま、あっさりと手持ちの髪ゴムで一つに縛ってしまった。
「目が覚めたか?」
上目使いといえばまだ聞こえの良い眼差しで見上げれば、
「まぁ~な~」
嘘だ。まだラグナは寝ぼけている。
スコールは瞬時に判断を切り捨てた。
「それにしてもまーた暑さが戻って来ちまったな」
取り出した布で首筋を拭っている。どうやらじっとりと汗をかいている様だ。
昨日探索を切り上げたこの辺りは異様に蒸し暑い。
しかし、一定時間毎に急に寒くなるから厄介だ。
スコールが見張りをしていた時間帯がまさにそれだった。
お蔭で敵への警戒用に焚いていたたき火が随分役に立った。
しかし、その時間も過ぎてきたようだ。
「スコール、大丈夫か?」
「大丈夫だ。だが確かに暑くなってきたな」
思い切って着ていたジャケットを脱ぐ。
と、僅かだがひんやりとした空気がむき出しの腕にさらりと流れ込む。
その心地よさに小さく息を吐き、たき火を挟んだ己の前にどっしりと座りこんだ男を眺め見る。
思い出した記憶の中に彼の存在はくっきりと浮き彫りとなっている。
この世に生を受けて、そこから17年目にして初めて会いまみえたこの男こそ、自分の父親だと言う事を、スコールは何時の間にか思い出していた。
確かに元の世界で出会った姿と比べれば、確実に若いが、それでも彼の持つ空気は全く変わらない。
子供の様な面の中に、確かな大人の包容力と厳しさを併せ持つ、彼の姿を知る者は一体何人いる事か。
と、
「スコール?もしかして熱中症?」
ラグナの心配そうな声にスコールはようやく現実に戻ってきた。
少々思考を膨らませ過ぎたらしい、と頭を振り、
「違う。考え事だ」
「なら良いけど。お前っていろいろ深刻そうな考えしてそうだから、おじちゃん心配だわ」
軽く伸びをしながらそう言うラグナに、
「大丈夫だ、余計な心配するな」
ぴしゃりと返し、そろそろ朝餉の支度用に湯でも沸かそうかと立ち上がろうとしたスコール。
しかし、それは遮られてしまった。
「可愛いわが子の心配くらい、させて欲しいんだけどな」
瞬時に脳内が氷点下を迎える。それ程までにスコールの意識は冷え切っていた。
自分が記憶を取り戻したのと同様に、ラグナも思い出したのか。
どうしてその可能性を無視していたのかと、思わず己の安穏さを嫌悪する。
出来れば思い出して欲しくなかった。
例え思い出していても、ばれたくなかった。
唯でさえ他人同士だったのだ。今更そんな事意識して関りあいたくない。
どう対応していいか解らないのだ。
「そっか……」
沈黙を守るスコールを目に、ラグナはどうやら自分だけがその記憶を思い出したと判断したらしい。
「わりぃ、今のは俺が調子に乗った。お前見てるとそんな気分になっちまっただけだよ。」
ひょいと立ち上がり、手にしていた布を軽くたたみ、
「そうそう、も1個変な事言っちゃお。お前今日誕生日だろ、おめでとな」
「え?」
ようやく顔を上げたスコールの頭に手を伸ばし、くしゃくしゃと髪をかき混ぜて、
「お前に会えて本当に良かった」
まっすぐに合された視線が痛い。
翡翠の色は普段の彼が隠し持つ、仲間を見守る大人の慈しみに満ちていた。
真剣でありながら、儚いものを見つめる、あたたかくて切ない眼差し。
ラグナの言葉と視線が持つ、彼への気持ち。
それがすべてスコールの心へ注がれていた。
「……ああ」
のどの奥でわずかに搾り取られたようなかすれた声でようやく返したのが精一杯だ。
一体ラグナはどこまで記憶を取り戻した?
いや、そんな事はどうでもいい。
「さて、顔洗って、水汲んでくるな。皆起きてきたらスコールはちょっと休んどけよ」
もう一度だけ髪を梳くように頭を撫で、あっさりと踵を返すラグナ。
その足取りは今日もいつもと同じで迷いが無い。
だんだんと遠くなる彼の背をぼんやりと見つめながら、スコールの心には淡くあたたかくも刃物のような鋭さを隠し持つ嵐が吹き荒れていた。
(本当は会えて嬉しかったんだ。こんな場所でも)
いつか元の世界に帰った時、同じ言葉を彼から聞けたら。
(伝えられたら、いい)
自分も会えて良かったと、彼に伝えられる様に。
一人残され、未だ座り込むスコール。
彼の心には、小さくとも優しい思いが静かに芽吹いていた。
時間の流れの不明確なこの世界に召喚され、どれほどの時間が経ったのだろうか。
目の前の燃え盛る炎を眺めながら、スコールはいつの間にか過ぎて行った日々を緩慢に思い浮かべていた。
彼の時間間隔でそろそろ夜明けが近いこの一時。
今テントの中で休んでいる仲間達ももうしばらくすれば起き出す頃合だろう。
と、顔を上げれば目の前のたき火を挟んだ先にあるテントから、ぼんやりとした表情のラグナがのそのそと大型のクマの様に這い出してきた。
「あ~、スコール、おはよ……」
大きな欠伸と共に間延びした挨拶をしながら長い髪を手ぐしで無理矢理まとめ始める。
器用何だか不器用何だか。
彼はスコールの呆れた目線に気付かずに、寝ぼけたまま、あっさりと手持ちの髪ゴムで一つに縛ってしまった。
「目が覚めたか?」
上目使いといえばまだ聞こえの良い眼差しで見上げれば、
「まぁ~な~」
嘘だ。まだラグナは寝ぼけている。
スコールは瞬時に判断を切り捨てた。
「それにしてもまーた暑さが戻って来ちまったな」
取り出した布で首筋を拭っている。どうやらじっとりと汗をかいている様だ。
昨日探索を切り上げたこの辺りは異様に蒸し暑い。
しかし、一定時間毎に急に寒くなるから厄介だ。
スコールが見張りをしていた時間帯がまさにそれだった。
お蔭で敵への警戒用に焚いていたたき火が随分役に立った。
しかし、その時間も過ぎてきたようだ。
「スコール、大丈夫か?」
「大丈夫だ。だが確かに暑くなってきたな」
思い切って着ていたジャケットを脱ぐ。
と、僅かだがひんやりとした空気がむき出しの腕にさらりと流れ込む。
その心地よさに小さく息を吐き、たき火を挟んだ己の前にどっしりと座りこんだ男を眺め見る。
思い出した記憶の中に彼の存在はくっきりと浮き彫りとなっている。
この世に生を受けて、そこから17年目にして初めて会いまみえたこの男こそ、自分の父親だと言う事を、スコールは何時の間にか思い出していた。
確かに元の世界で出会った姿と比べれば、確実に若いが、それでも彼の持つ空気は全く変わらない。
子供の様な面の中に、確かな大人の包容力と厳しさを併せ持つ、彼の姿を知る者は一体何人いる事か。
と、
「スコール?もしかして熱中症?」
ラグナの心配そうな声にスコールはようやく現実に戻ってきた。
少々思考を膨らませ過ぎたらしい、と頭を振り、
「違う。考え事だ」
「なら良いけど。お前っていろいろ深刻そうな考えしてそうだから、おじちゃん心配だわ」
軽く伸びをしながらそう言うラグナに、
「大丈夫だ、余計な心配するな」
ぴしゃりと返し、そろそろ朝餉の支度用に湯でも沸かそうかと立ち上がろうとしたスコール。
しかし、それは遮られてしまった。
「可愛いわが子の心配くらい、させて欲しいんだけどな」
瞬時に脳内が氷点下を迎える。それ程までにスコールの意識は冷え切っていた。
自分が記憶を取り戻したのと同様に、ラグナも思い出したのか。
どうしてその可能性を無視していたのかと、思わず己の安穏さを嫌悪する。
出来れば思い出して欲しくなかった。
例え思い出していても、ばれたくなかった。
唯でさえ他人同士だったのだ。今更そんな事意識して関りあいたくない。
どう対応していいか解らないのだ。
「そっか……」
沈黙を守るスコールを目に、ラグナはどうやら自分だけがその記憶を思い出したと判断したらしい。
「わりぃ、今のは俺が調子に乗った。お前見てるとそんな気分になっちまっただけだよ。」
ひょいと立ち上がり、手にしていた布を軽くたたみ、
「そうそう、も1個変な事言っちゃお。お前今日誕生日だろ、おめでとな」
「え?」
ようやく顔を上げたスコールの頭に手を伸ばし、くしゃくしゃと髪をかき混ぜて、
「お前に会えて本当に良かった」
まっすぐに合された視線が痛い。
翡翠の色は普段の彼が隠し持つ、仲間を見守る大人の慈しみに満ちていた。
真剣でありながら、儚いものを見つめる、あたたかくて切ない眼差し。
ラグナの言葉と視線が持つ、彼への気持ち。
それがすべてスコールの心へ注がれていた。
「……ああ」
のどの奥でわずかに搾り取られたようなかすれた声でようやく返したのが精一杯だ。
一体ラグナはどこまで記憶を取り戻した?
いや、そんな事はどうでもいい。
「さて、顔洗って、水汲んでくるな。皆起きてきたらスコールはちょっと休んどけよ」
もう一度だけ髪を梳くように頭を撫で、あっさりと踵を返すラグナ。
その足取りは今日もいつもと同じで迷いが無い。
だんだんと遠くなる彼の背をぼんやりと見つめながら、スコールの心には淡くあたたかくも刃物のような鋭さを隠し持つ嵐が吹き荒れていた。
(本当は会えて嬉しかったんだ。こんな場所でも)
いつか元の世界に帰った時、同じ言葉を彼から聞けたら。
(伝えられたら、いい)
自分も会えて良かったと、彼に伝えられる様に。
一人残され、未だ座り込むスコール。
彼の心には、小さくとも優しい思いが静かに芽吹いていた。
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夏コミが過ぎてもう10日だよ、私。
挨拶が遅れまして申し訳ございません。
来てくださった皆様、本当にありがとうございました。
宅配受け取りのタイミングを逃し、11時過ぎにようやく全冊揃っての配本となりまして、皆様にはご迷惑をお掛けしました。
また参加の機会を頂けましたならこのようなドべをしない様、気を引き締めてまいりたいと思います。
さて、シリアスネタをのんびりペースで続けている最中、気が付けばスコ誕が目の前でした。
出来ればこの場でもお祝いできるように頑張りたいです。
挨拶が遅れまして申し訳ございません。
来てくださった皆様、本当にありがとうございました。
宅配受け取りのタイミングを逃し、11時過ぎにようやく全冊揃っての配本となりまして、皆様にはご迷惑をお掛けしました。
また参加の機会を頂けましたならこのようなドべをしない様、気を引き締めてまいりたいと思います。
さて、シリアスネタをのんびりペースで続けている最中、気が付けばスコ誕が目の前でした。
出来ればこの場でもお祝いできるように頑張りたいです。
スコールは氷に動きを止められたまま意識を失っていた。
しかし、脳内では恐ろしい程に冷静に一つの記憶を再生していた。
夢、という形で。
フリオニールが渾身の思いで魔力を放出した氷に閉ざされ、右胸の出血はきれいに止まっている。
ラグナはその姿を改めて見つめ、ふと疑問をもらす。
「何でこいつの動きを止めろって、ウォーリアは言ったんだろうな」
同じ様にスコールの前に立ち、手持ちの包帯と布で簡単な手当てを済ませたフリオニールが彼の顔を覗き込む。
その顔色は青白く、暗闇に満ちた目は瞼によって今は見えない状態だ。
「解らない。もしかしたら何かを知っているのかもしれない」
ウォーリアと比較的親交のあるフリオニールでもその理由は知らされていなかった。
彼の言葉は恐ろしく明確でぶれがないが、今回の様なパターンは初めてだ。
ラグナはその閉ざされた顔に手を伸ばしながら、
「一体、お前は何なんだろうな」
その指先が触れそうな程にスコールの頬に近づく。
「待て!目覚めて抵抗したらどうする!」
フリオニールがラグナの腕を掴み、その手を彼から遠ざけた。
「ラグナ、一体何を」
まるで自分では無かったかのような感覚に、ラグナ自身も驚いている。
スコールに語りかける様に自然と出た言葉が引き金の様だった。
彼の表情を眺めていた筈が一瞬、全く違うものが見えた気がしたのだ。
その瞬間、ラグナの意識は何者かに奪われたように閉ざされ、操られるように手を伸ばしたのだった。
「あ、俺……。何か、変な感じだった」
フリオニールの咄嗟の行動がラグナの助けになった。
「変?」
彼の表情が苦く歪む。
「何か、よく解らないけど。こいつに触れたくなった」
フリオニールに掴まれた腕が少々痛いが、ラグナは今それに気を回せない。
先程の奇妙な感覚がラグナの意識にこびりついている様だ。
「とにかく、あまり近づかない方がいいな」
フリオニール自身も考えてみたが、そんな衝動は全くなかった。
再びスコールの顔を見るも、やはりそんな感じは浮かばない。
しかし、この事もウォーリアには報告すべきだろう。
そう思い、ようやくラグナの腕を離す。
「悪い、フリオ。助かった」
「気を付けてくれよ」
苦笑いの様な顔で謝ったその瞬間。
「すまない。待たせてしまった」
ようやくコスモス軍を束ねる戦士が彼等の前に現れた。
一緒にオニオンナイト、セシルも彼の後ろから駆け寄ってくる。
「ありがとな、オニオン」
ラグナ、フリオニールの様子を見てほっと安堵したオニオンナイトが軽快な足さばきでスコールの前にやってきた。
相変わらず彼は先程のラグナの奇妙な感覚など知らぬ顔で眠り続けている。
「どういたしまして」
と、視線をウォーリアに戻し、
「どうするの?」
彼を一体どうしたいのだろう。
それはラグナ、フリオニール両方の質問でもある。
それに一瞬だけ俯いたウォーリアが、オニオン達に視線を向け、
「彼を連れ帰る」
その言葉に驚きを隠せない。
スコールは、目の前の男はコスモスの仲間を片っ端から倒してきた憎むべき者だ。
「何を言ってるの!こいつは散々僕達の仲間を殺してきたんだよ!」
オニオンの感情が爆発する。それに吊られるようにフリオニールも、
「理由を教えてくれないか。じゃないと俺も納得できない」
セシルとラグナは驚きの為か声を出せずにいる様だ。
しかし、ウォーリアには想像通りの事だったのだろう。
溜息をつくかの様に息を吐き、
「彼には確かめたい事がある」
と、手の中に一つのアイテムを呼び出した。
「ウォーリア、これは何?」
セシルがその手の中のものを指さす。
薄い黄色の親指程の大きさのビン。
液体が入っているであろう事は想像できたが、コルクの様な蓋となるものはついていない。
例えるならアンプルの様なそれは、ここに居る彼ら全員が初めて見るものだった。
ウォーリア自身もこれまで見た事の無かったアイテムの、細くくぼんだ部分を折る。
パンと小さな音を立てて二つになったそれの片方をそのままスコールに向けて振りかけた。
と、その瞬間に彼の瞼が動き、静かに開かれる。
そこにはあの感情の無い闇色は無く、灰色の混じった蒼が彼等を見据える様に存在していた。
「ウォーリア!」
「大丈夫だ」
焦る声をあっさり流し、スコールを見つめる勇者。
その前には、意識を取り戻したスコールが今まさに何かを発しようと口を開いたところだった。
「俺は、何をしていた……?」
スコールが絞り出したその言葉に苦く口元をゆがめるウォーリア。
ラグナはその表情を見、スコールを再び見つめる。
ウォーリアの真意と、スコールの言葉。
ラグナはただ疑問の渦中、一人さまようばかりだった。
ラグナロク 4へ
しかし、脳内では恐ろしい程に冷静に一つの記憶を再生していた。
夢、という形で。
フリオニールが渾身の思いで魔力を放出した氷に閉ざされ、右胸の出血はきれいに止まっている。
ラグナはその姿を改めて見つめ、ふと疑問をもらす。
「何でこいつの動きを止めろって、ウォーリアは言ったんだろうな」
同じ様にスコールの前に立ち、手持ちの包帯と布で簡単な手当てを済ませたフリオニールが彼の顔を覗き込む。
その顔色は青白く、暗闇に満ちた目は瞼によって今は見えない状態だ。
「解らない。もしかしたら何かを知っているのかもしれない」
ウォーリアと比較的親交のあるフリオニールでもその理由は知らされていなかった。
彼の言葉は恐ろしく明確でぶれがないが、今回の様なパターンは初めてだ。
ラグナはその閉ざされた顔に手を伸ばしながら、
「一体、お前は何なんだろうな」
その指先が触れそうな程にスコールの頬に近づく。
「待て!目覚めて抵抗したらどうする!」
フリオニールがラグナの腕を掴み、その手を彼から遠ざけた。
「ラグナ、一体何を」
まるで自分では無かったかのような感覚に、ラグナ自身も驚いている。
スコールに語りかける様に自然と出た言葉が引き金の様だった。
彼の表情を眺めていた筈が一瞬、全く違うものが見えた気がしたのだ。
その瞬間、ラグナの意識は何者かに奪われたように閉ざされ、操られるように手を伸ばしたのだった。
「あ、俺……。何か、変な感じだった」
フリオニールの咄嗟の行動がラグナの助けになった。
「変?」
彼の表情が苦く歪む。
「何か、よく解らないけど。こいつに触れたくなった」
フリオニールに掴まれた腕が少々痛いが、ラグナは今それに気を回せない。
先程の奇妙な感覚がラグナの意識にこびりついている様だ。
「とにかく、あまり近づかない方がいいな」
フリオニール自身も考えてみたが、そんな衝動は全くなかった。
再びスコールの顔を見るも、やはりそんな感じは浮かばない。
しかし、この事もウォーリアには報告すべきだろう。
そう思い、ようやくラグナの腕を離す。
「悪い、フリオ。助かった」
「気を付けてくれよ」
苦笑いの様な顔で謝ったその瞬間。
「すまない。待たせてしまった」
ようやくコスモス軍を束ねる戦士が彼等の前に現れた。
一緒にオニオンナイト、セシルも彼の後ろから駆け寄ってくる。
「ありがとな、オニオン」
ラグナ、フリオニールの様子を見てほっと安堵したオニオンナイトが軽快な足さばきでスコールの前にやってきた。
相変わらず彼は先程のラグナの奇妙な感覚など知らぬ顔で眠り続けている。
「どういたしまして」
と、視線をウォーリアに戻し、
「どうするの?」
彼を一体どうしたいのだろう。
それはラグナ、フリオニール両方の質問でもある。
それに一瞬だけ俯いたウォーリアが、オニオン達に視線を向け、
「彼を連れ帰る」
その言葉に驚きを隠せない。
スコールは、目の前の男はコスモスの仲間を片っ端から倒してきた憎むべき者だ。
「何を言ってるの!こいつは散々僕達の仲間を殺してきたんだよ!」
オニオンの感情が爆発する。それに吊られるようにフリオニールも、
「理由を教えてくれないか。じゃないと俺も納得できない」
セシルとラグナは驚きの為か声を出せずにいる様だ。
しかし、ウォーリアには想像通りの事だったのだろう。
溜息をつくかの様に息を吐き、
「彼には確かめたい事がある」
と、手の中に一つのアイテムを呼び出した。
「ウォーリア、これは何?」
セシルがその手の中のものを指さす。
薄い黄色の親指程の大きさのビン。
液体が入っているであろう事は想像できたが、コルクの様な蓋となるものはついていない。
例えるならアンプルの様なそれは、ここに居る彼ら全員が初めて見るものだった。
ウォーリア自身もこれまで見た事の無かったアイテムの、細くくぼんだ部分を折る。
パンと小さな音を立てて二つになったそれの片方をそのままスコールに向けて振りかけた。
と、その瞬間に彼の瞼が動き、静かに開かれる。
そこにはあの感情の無い闇色は無く、灰色の混じった蒼が彼等を見据える様に存在していた。
「ウォーリア!」
「大丈夫だ」
焦る声をあっさり流し、スコールを見つめる勇者。
その前には、意識を取り戻したスコールが今まさに何かを発しようと口を開いたところだった。
「俺は、何をしていた……?」
スコールが絞り出したその言葉に苦く口元をゆがめるウォーリア。
ラグナはその表情を見、スコールを再び見つめる。
ウォーリアの真意と、スコールの言葉。
ラグナはただ疑問の渦中、一人さまようばかりだった。
ラグナロク 4へ
荒い息で駆け巡るオニオンナイト。
ここは彼の宿敵である暗闇の雲の存在する場所だ。
しかし、今彼が体勢を整え、時に魔法を繰り出しながら翻弄しているのはかの相手ではない。
スコール・レオンハート。
カオスの一員である彼はオニオンの考えていたよりもずっと俊敏に動く相手だった。
時に空間を変え、ほのかに光るスロープの様なそれを使って彼の上空へ移動し、巨大な炎の魔法を発現させる。
「…っ、燃えちゃえ!」
腕を勢いよく振り、彼の立つ足場をめがけて飛んだ火の玉は確実にスコールを捉えた。
勢いよく爆発するそれに吹き上がる熱風。
アシストをしていたラグナ、彼等と共に行動していたフリオニールがその熱さから身を守るように腕で顔を庇う。
「やった、か?」
熱風の中でそう確認するフリオニールに、オニオンも彼に一矢報いたと確信した。
しかし、
「うぉぁ!」
ラグナの焦りすぎた叫び声に二人がスコールのいた場所を再び見た瞬間。
「弾けろ」
ひやりとする程に冷静な声がオニオンの眼前に突きつけられる。
「!」
円形の炎に炸裂する音。
確実にスコールの攻撃はオニオンを狙っていた。
「オニオン!」
フリオニールの咄嗟の声が何故か静かにはっきりと爆音の中から聞こえた。
一体どうやって彼はオニオンの放った魔法から身を守ったのか。
そう思う暇すらなく、スコールの攻撃はオニオンに相当な深手を与えた。
薬莢の飛び交う、煙幕の中にオニオンナイトはかろうじて立っていた。
しかし、彼のトレードマークの様な赤い兜はどこかに飛び去り、体を庇った両腕にはいくつもの深い火傷が夥しく広がっていた。
「当たれ!」
煙幕の中の彼をようやく発見したフリオニールが怒りに任せてスコールめがけて矢を放った。
その瞬間。
「!?」
彼の右胸から深紅の液体がまっすぐに軌跡を描いて飛び散った。
ちょうどスコールを挟んだ先にいたラグナが手持ちの銃で彼の動きを止めたのだ。
怯み、足元がおぼつかなくなりそうな体を何とか持ちこたえているスコールに、
「フリオ!」
ラグナの声で放たれたフリオニールの魔法でスコールの体は足元から一気に氷に固定される。
胸元まで氷に固められ、もがく勢いすら失いそうになるスコール。
その様子をやっと意識がはっきりしてきたオニオンナイトが見上げる。
闇色に染まった眼の勢いがまるでスイッチが切れたようにみるみるなくなってゆく。
「大丈夫か?」
「うん、何とか」
そう答えるオニオンだが、深い傷や火傷は確実に彼の動作から素早さを奪っている。
「ほい」
フリオニールの後から警戒を解ききらないままにやってきたラグナが、手持ちのポーションをオニオンに渡し、
「ありがとう」
さすがにオニオンも現状を解っているのか、無理をする事無く彼の渡してきたポーションを使う。
「眠った、みたいだな」
「動きを止めるだけで3人がかりか」
スコールの深い闇をたたえた目が瞼で閉ざされ、ようやく深く息を吐いたラグナに、フリオニールが疲労に満ちた声で同じくため息を零す。
彼等は偶然スコールと戦っていたわけではない。
複数のメンバーでパーティを組み、いつ襲撃にあっても最悪敵から逃げる事が出来る様にしていたコスモス軍。
その中で偶然スコールを見つけた3人は、彼をそのまま尾行し、隙を見て一気に攻撃に出たのだった。
足の速いオニオンナイトを囮兼メイン相手として、残りの二人でアシストしながら彼の動きを止める。
しかし、スコールの攻撃は的確かつ、決して焦って戦う事をしない。
相手の動きをきっちりと読み、それを把握して返す。
それによりオニオンによる攪乱は厳しさを増し、彼が深手を負う事でようやく勝機を見出し彼を止める事に成功した。
「とにかくウォーリアに報告だな」
「そうだね」
彼には数々の仲間達を倒された恨みがある。
しかし、彼等コスモス軍のリーダーは何故か「スコールを倒せ」とは言わなかった。
「動きを止めろ」とだけ。
一体、彼にどんな策があるのだろうか。
そもそも策を巡らせるには似合わない彼の言葉に、他の仲間達も、オニオン達も戸惑った。
それでも彼が仲間達に不利益になる事はしない。
これまでの彼の言動を信じ、3人はスコールの動きを止め、その命を奪う事はしなかったのだ。
「オニオン、頼めるか?」
さっきポーションで治療してきついかもしれないが、と心配そうなフリオニールに、
「大丈夫だよ。僕の方が皆より足が速いからね」
にっこりと笑い、彼の気遣いを受け止めた。
「気を付けろよ」
「解ってるよ、ラグナ。じゃ、行ってきます」
そう残し、ぱたぱたと駆け出したオニオン。
少々心配そうにその後ろ姿を見つめるフリオニールと、再びスコールを見上げるラグナ。
相変わらず彼は愛剣ごと氷に閉ざされている。
その姿を見ながら、
「――」
何かを言いたそうにし、視線を外す。
その様子を見ていた者がいる。
彼等から随分離れた場所に立つ柱の上に、彼女は優雅に腰掛けていた。
妖艶な笑みを浮かべて彼等を見ながら、
「さぁ、私の為に踊りなさい」
そう残して黒い羽を浮かばせてこの空間から消え去った。
ラグナロク 3へ
ここは彼の宿敵である暗闇の雲の存在する場所だ。
しかし、今彼が体勢を整え、時に魔法を繰り出しながら翻弄しているのはかの相手ではない。
スコール・レオンハート。
カオスの一員である彼はオニオンの考えていたよりもずっと俊敏に動く相手だった。
時に空間を変え、ほのかに光るスロープの様なそれを使って彼の上空へ移動し、巨大な炎の魔法を発現させる。
「…っ、燃えちゃえ!」
腕を勢いよく振り、彼の立つ足場をめがけて飛んだ火の玉は確実にスコールを捉えた。
勢いよく爆発するそれに吹き上がる熱風。
アシストをしていたラグナ、彼等と共に行動していたフリオニールがその熱さから身を守るように腕で顔を庇う。
「やった、か?」
熱風の中でそう確認するフリオニールに、オニオンも彼に一矢報いたと確信した。
しかし、
「うぉぁ!」
ラグナの焦りすぎた叫び声に二人がスコールのいた場所を再び見た瞬間。
「弾けろ」
ひやりとする程に冷静な声がオニオンの眼前に突きつけられる。
「!」
円形の炎に炸裂する音。
確実にスコールの攻撃はオニオンを狙っていた。
「オニオン!」
フリオニールの咄嗟の声が何故か静かにはっきりと爆音の中から聞こえた。
一体どうやって彼はオニオンの放った魔法から身を守ったのか。
そう思う暇すらなく、スコールの攻撃はオニオンに相当な深手を与えた。
薬莢の飛び交う、煙幕の中にオニオンナイトはかろうじて立っていた。
しかし、彼のトレードマークの様な赤い兜はどこかに飛び去り、体を庇った両腕にはいくつもの深い火傷が夥しく広がっていた。
「当たれ!」
煙幕の中の彼をようやく発見したフリオニールが怒りに任せてスコールめがけて矢を放った。
その瞬間。
「!?」
彼の右胸から深紅の液体がまっすぐに軌跡を描いて飛び散った。
ちょうどスコールを挟んだ先にいたラグナが手持ちの銃で彼の動きを止めたのだ。
怯み、足元がおぼつかなくなりそうな体を何とか持ちこたえているスコールに、
「フリオ!」
ラグナの声で放たれたフリオニールの魔法でスコールの体は足元から一気に氷に固定される。
胸元まで氷に固められ、もがく勢いすら失いそうになるスコール。
その様子をやっと意識がはっきりしてきたオニオンナイトが見上げる。
闇色に染まった眼の勢いがまるでスイッチが切れたようにみるみるなくなってゆく。
「大丈夫か?」
「うん、何とか」
そう答えるオニオンだが、深い傷や火傷は確実に彼の動作から素早さを奪っている。
「ほい」
フリオニールの後から警戒を解ききらないままにやってきたラグナが、手持ちのポーションをオニオンに渡し、
「ありがとう」
さすがにオニオンも現状を解っているのか、無理をする事無く彼の渡してきたポーションを使う。
「眠った、みたいだな」
「動きを止めるだけで3人がかりか」
スコールの深い闇をたたえた目が瞼で閉ざされ、ようやく深く息を吐いたラグナに、フリオニールが疲労に満ちた声で同じくため息を零す。
彼等は偶然スコールと戦っていたわけではない。
複数のメンバーでパーティを組み、いつ襲撃にあっても最悪敵から逃げる事が出来る様にしていたコスモス軍。
その中で偶然スコールを見つけた3人は、彼をそのまま尾行し、隙を見て一気に攻撃に出たのだった。
足の速いオニオンナイトを囮兼メイン相手として、残りの二人でアシストしながら彼の動きを止める。
しかし、スコールの攻撃は的確かつ、決して焦って戦う事をしない。
相手の動きをきっちりと読み、それを把握して返す。
それによりオニオンによる攪乱は厳しさを増し、彼が深手を負う事でようやく勝機を見出し彼を止める事に成功した。
「とにかくウォーリアに報告だな」
「そうだね」
彼には数々の仲間達を倒された恨みがある。
しかし、彼等コスモス軍のリーダーは何故か「スコールを倒せ」とは言わなかった。
「動きを止めろ」とだけ。
一体、彼にどんな策があるのだろうか。
そもそも策を巡らせるには似合わない彼の言葉に、他の仲間達も、オニオン達も戸惑った。
それでも彼が仲間達に不利益になる事はしない。
これまでの彼の言動を信じ、3人はスコールの動きを止め、その命を奪う事はしなかったのだ。
「オニオン、頼めるか?」
さっきポーションで治療してきついかもしれないが、と心配そうなフリオニールに、
「大丈夫だよ。僕の方が皆より足が速いからね」
にっこりと笑い、彼の気遣いを受け止めた。
「気を付けろよ」
「解ってるよ、ラグナ。じゃ、行ってきます」
そう残し、ぱたぱたと駆け出したオニオン。
少々心配そうにその後ろ姿を見つめるフリオニールと、再びスコールを見上げるラグナ。
相変わらず彼は愛剣ごと氷に閉ざされている。
その姿を見ながら、
「――」
何かを言いたそうにし、視線を外す。
その様子を見ていた者がいる。
彼等から随分離れた場所に立つ柱の上に、彼女は優雅に腰掛けていた。
妖艶な笑みを浮かべて彼等を見ながら、
「さぁ、私の為に踊りなさい」
そう残して黒い羽を浮かばせてこの空間から消え去った。
ラグナロク 3へ
久々の更新で失礼します。蘇芳です。
ひょこひょこ練っていた(5/4配布ペーパー参照)「スコールさんがカオス組の輪廻ネタ」を続き物でやっていこうと思います。
大体何話と決まってないのですが、たぶん10話は超えないと思います。
息切れしない、必ず完結するが目標ですが、よろしければおつきあい下さると嬉しいです。
【注意点】
1 アルスコの様な表現が混じりますが(1話・他)あくまで表現だけです。
2 過去の輪廻が舞台なので捏造がいつも以上に混ざります。(例:ゲーム本編で登場しなかったキャラも想定していますが、特定の名前は出てきません。)
3 ラグスコが基本ですが、別のキャラが混じるかもしれません。
大丈夫な方は『つづき』からどうぞ。
ひょこひょこ練っていた(5/4配布ペーパー参照)「スコールさんがカオス組の輪廻ネタ」を続き物でやっていこうと思います。
大体何話と決まってないのですが、たぶん10話は超えないと思います。
息切れしない、必ず完結するが目標ですが、よろしければおつきあい下さると嬉しいです。
【注意点】
1 アルスコの様な表現が混じりますが(1話・他)あくまで表現だけです。
2 過去の輪廻が舞台なので捏造がいつも以上に混ざります。(例:ゲーム本編で登場しなかったキャラも想定していますが、特定の名前は出てきません。)
3 ラグスコが基本ですが、別のキャラが混じるかもしれません。
大丈夫な方は『つづき』からどうぞ。