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期間限定「DFF」、「DdFF」、「FF8」妄想だだ漏れブログ。 の筈が「進撃の巨人」にも手を出した腐のブログ。 初めての方はカテゴリーの『first』をご覧下さい。
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10月末の深夜。
終わりそうでなかなか終わりの見えない書類を前に、一人苛立ちを隠せない男が一人。
いつもなら執務室で決して吸わない煙草を片手に、もう何杯目かすら忘れた濃い目のコーヒーをまるでビールを呷るかのようなしぐさで飲み干す。と、とたんに吐き出される溜息。
目の前の書類はもう大分片付いてきているが、その後ろに夕刻追加された検討事項が彼を苦しめている。
とは言えそろそろ目処をつけなければ、と、
「お疲れ様です、閣下」
声と共に開かれた扉から青年が一人ひょっこりと現れた。
「おー、お疲れさん」
ぐったりとした声と空気を隠す事無く、青年、スコールにひらひらと力なく手を振った。顎をぺたりと机につけてもうすっかりくたびれた形相だ。
と、煙草独特の煙の匂いが声の次にスコールを歓迎する。
「・・・ここでは煙草、吸わないんじゃなかったのか?」
いつの間にか目の前に来たスコールに軽い嫌味を食らっても、さすがに反論はおろか、返答すら面倒なようだ。振っていた手をペタンとわざと音を立てて下げ、
「んー、一本だけだって。それよりどうした?今日は来る予定じゃなかったろ?」
「来て悪いか」
少しトーンの下がった声で返すも、今日のラグナは暖簾に腕押し。
「いーや、嬉しいよ。だけどもうちょいって所で終わんねぇんだなぁ、こいつら」
ラグナが未決済の書類へ視線を投げればつられてスコールも同じようにそっちを見た。枚数はほんの数枚といったところだが、おそらく疲労が溜まっているのだろう。さながらゴールを目の前にしてスタミナが切れたようだ。
「もうちょっとだろ。キロスにお茶貰ってきたからそれでも飲めよ」
温かい紅茶の入ったカップを置き、やれやれといわんばかりの視線で見つめる。忙しいとは聞いていたが、ここまでの彼を見たのは久しぶりだ。
正直、来るタイミングを間違えたか、と思わざるを得ない。
しかし、
「これでも食って片付けろ、明日は朝少しは時間あるんだろ?」
勢いのままカップを置いた流れに乗って、もう片手に持っていた袋をその隣に並べた。
「?何これ、スコール?」
お茶の心地よい香りで少し意識を浮上させたラグナが、突っ伏していた体を持ち上げてその袋に手を伸ばした。ちょうど片手ですっぽり包める程度の大きさのそれは、麻紐で口を縛られた、どこにでもありそうな茶色の紙袋だ。重さもほとんど感じないそれを開封し、
「おー、甘いもの」
一瞬にして喜色満面になった彼の手に現れたのは、少々小振りのチョコレートブラウニー。おそらく手作りだろう、パッケージも無ければラベルも無い、そのままの菓子が取り出された。
「・・・本当は悪戯でもしてやろうかと思ったんだがな」
嬉しそうな表情に、思わず憎まれ口のような照れ隠しのような言葉がついて出る。しかし、ラグナにとってそれはいつもの事だ。
「ああ、そっか?ハロウィンね」
と、齧り付けば甘さの中にどこかほろ苦い風味が口いっぱいに広がった。
出された紅茶と一緒に、ただひたすらに手の中の菓子を味わう事に集中する。
「ん、美味い。ありがとな」
「・・・ああ」
スコールの思いがけない来訪と、プレゼントにすっかりさっきまでの疲労をどこかにやってしまったラグナ。そんなラグナを見て、思わず心の中でほっとするスコール。
突然だけど、来て良かった。
ラグナの手の中からすっかり消えて、完食されてしまった小さな菓子。
その様子と彼の笑みに穏やかな気持ちがあふれるのを自覚していたその時。
「でもよー。お菓子をくれなきゃ、悪戯するんだろ?でもお前はさっき「悪戯してやろうか」なんて言ってたけど、結局しなかったし、お菓子もくれた。なーんかあべこべじゃね?」
「?」
未だ穏やかであたたかな気持ちから現実に切り替えていなかったのか?スコールの反応が一瞬遅れる。
それを逃すラグナではない。
「てことは、だ。俺が本当は「お菓子をくれなきゃ悪戯するぞ」って言うべきだったんだよなぁ」
両手を組んで軽く顎を乗せ、ニヤニヤと上目遣いでスコールを見つめる彼にようやく気がついても時すでに遅し。
こんな表情をしている時のラグナは大抵ろくな事を言わない。それはこれまでの経験がすべて物語っている。
親だからそこは容赦するだろう。なんて甘い想像はこれまでの彼との付き合いですっかり捨ててしまったスコールは内心たじろぐ。
「俺ばっかり貰ってばっかりじゃ悪いよな。今のセリフから察するに、悪戯で返すのが礼儀かなーって思うんだけど」
(どう考えたらそうなるんだ!)
一瞬にして頬を赤く染めるスコールにますます調子付くラグナ。
しかし、スコールには最後の切り札が残っていた。
「と、とっとと仕事片付けろ!まだ残ってるんだろう!」
怒鳴りつけるように切り返すも、効果が無いのは知っている。それでも黙っているなんて今のスコールでは出来ない相談だ。
勿論ラグナもそこは了承済み。
「じゃ、さっさと片付けますかね」
軽い調子で残された書類に手を伸ばし、
「あ、」
今のうちに、と踵を返そうとするスコールへ、最終通告。
「護衛ついでに一緒に帰ろうぜ」
声は彼へ、手と目線は書類へ。
決して言葉に含まれた意味を考えるな。
そうスコールは思い直し、結局彼の仕事が終わるまで、部屋を出る事は許されなかった。
出る事を許されなかった、というより、部屋を出なかっただけだが。

さて、悪戯は?


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