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期間限定「DFF」、「DdFF」、「FF8」妄想だだ漏れブログ。 の筈が「進撃の巨人」にも手を出した腐のブログ。 初めての方はカテゴリーの『first』をご覧下さい。
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メール受信から数ヶ月。
時折連絡を取りつつも、お互いに「異世界」の話題に触れぬまま今日という日が訪れた。
夕闇深まる時刻よりもう少し進んだ今。
自分で淹れたコーヒーを啜りながら、スコールはラグナの自宅のリビングで子供のように小さく座り込んで、家の主を待っていた。

と、時刻はなお進んで21時。
手持ちの飲み物はすっかり冷め、最後の一口を残したままに床に置き去りになったまま。
先日ラグナに与えられた自室から毛布を引っ張り出してソファにもたれてそれをかぶる。窓の外には眩い程に星空が広がり、そこがエスタ市街地から離れた区域だと改めて自覚させられる。普段彼のいる「職場」は、日常的に街の明かりに邪魔されて小さな星が見えないのだ。かろうじてぽつりと光が見える程度の空に慣れていた己にとって、それは少しだけ「彼の世界」を思い出させた。
「ただいまー」
疲れきった声音がリビングにかすかに届く。護衛の連中からようやく解放されたのか、普段はなかなか補佐官達ですら見ることの無い表情でどたどたと近づいてくる。
「悪い、スコール」
ひょっこりと廊下から顔を出し、いつものようににっと笑う。それに安堵する自分。
「おかえり、ラグナ」
かぶっていた毛布を外し、食事の用意でも、と立ち上がれば、
「あ、飯は食ってきた。ところで」
スコールの肩を軽く掴み、やや背中を丸めて視線を彼に合わせる。翠の瞳がまっすぐにスコールを捕らえる。思わず振り払う事も何も出来ず、彼に誘導されるまま再び座っていた場所に体を戻す形となったスコールに、なおもラグナが言葉を重ねる。
「本当に覚えてないんだな」
確認に確認を重ねる声で真剣に見つめられる。
その言葉に一瞬間を空けてしまうも、先日のメールにあった件だと思い出す。そして返事に躊躇ってしまう。なぜならその時に返したメールには嘘を書いたから。
本当は「あの世界」事は思い出していたから。
ただ、いつからか思い出すたびに大切な仲間達を思い浮かべて懐かしむ気持ちの奥に、誰かを忘れたような気がし始めていたから。
誰かは今日まで思い出すことは無かった。でもラグナがこの話をするのなら、何かきっかけが掴める様な期待と不安を持っていた。
「なら、聞いてくれ」
着替える事もせず、ぺたりとスコールの横に座り直したラグナが小さく切り出す。
「俺はお前に謝らなきゃならないんだ」
「何を・・・・・・・」
「お前をまた置き去りにしちまった事をだ」
それを皮切りに、大切な思い出を搾り出すかのようにラグナは包み隠さず、異世界で共に過ごした日々を、覚えている記憶の全てを語り始めた。
共に戦ったこと、仲間達と過ごしたこと、そして希望を次の戦いに繋ぐ為別れる道を選んだことを。
あの時はそれが一番良い選択だと思った。でも彼の戦いで己が消え去る瞬間にそれは小さな後悔になってしまった。
スコールは黙って聞いている。いや、それしか出来なかったからだ。
ラグナの言葉が嘘ではない事も知っている。確かに彼の話の中に出てきた仲間達の事は自分も知っている。しかし、その中には聞いた事のない名前が飛び交う。と、
「俺は、次の戦いにお前達が少しでも楽になれるようにイミテーションを減らす戦いを選んだ」
そして、消えちまった。
だから、ごめんな。
と同時に掴まれた肩をぎゅっと引かれてそのままラグナに抱きしめられる。苦しいほどに力強い抱擁に眩暈すらしそうになる。
ああ、彼も、ラグナも自分と同じ場所に居たのだ。
瞬間。
スコールの知っている「異世界」の記憶に全く違う映像が浮かび上がり始めた。
それはラグナの語ってきた世界の内容そのままに、自分の隣にラグナが居た。

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