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期間限定「DFF」、「DdFF」、「FF8」妄想だだ漏れブログ。 の筈が「進撃の巨人」にも手を出した腐のブログ。 初めての方はカテゴリーの『first』をご覧下さい。
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 大統領閣下の年末年始はとにかく多忙だ。
 「世間の誰であろうと、それは同じだ」と、もしかしたら彼の古い友人は容赦なく言い放ったかもしれない。
 しかし、今年は本当に違って、例年以上に多忙を極めたのだ。
 かの戦いから幾分経ち、エスタは本格的に外交に舵を切り始めた。まずはSeeD派遣で随分お世話になっているバラム。それをきっかけにそのままドール公国、及び周辺との外交になだれ込む。
 新年明けてから本格的に始動する外交計画を滞りなく開始するため、準備は日々慌ただしさを増し、気付けば官邸内で年が明けてしまった。翌朝、大統領はなんとか身形を整えて、国民に向けて新年の挨拶を行う始末。
 その様子を護衛任務として見続けてきたスコールは小さくため息を吐いた。
 呆れではなく、心配として。
 スコールはこれまで幾度となく多忙な大統領、ラグナ・レゥアールを見てきた。護衛だけではない、プライベートとしてエスタを訪れた際にも、彼の仕事が本当は途轍もなく大変だとスコールは知っていた。
 しかし、今回だけはこれまで自分が見て知っているどれよりも酷かった。彼が休憩として仮眠を取ったり、食事をしたりする際に何となくではあったが気にかけていたつもりだった。疲労の溜まった彼を少しでも癒せないかと気を揉んでいた。
 そして、新年の挨拶も落ち着き始めた3日。
 ついにラグナが倒れたのだった。
 
「大丈夫か?」
 かすかに動いた瞼を見、ラグナの額に冷たく冷やしたタオルを乗せながらスコールが顔を覗き込む。
「あ……、れ?」
 少しは熱が引いたものの、潤んだ瞳が未だ体のだるさを訴えている様だ。
「すこーる?」
 かなり喉が渇いているのだろう、かすれた声が酷く聞き取りにくい。
「いいから飲め」
 氷を浮かべた水をグラスに溢れる程に注ぎ、押し付ける様にラグナに渡す。
 彼はされるがままにそれを受け取り、本能のままに飲み干した。肺の中の空気をすべて出し切るようなため息の後、
「今日、何日?」
「まだ3日だ。良かったな、キロスからしばらく公務は休みだと連絡があったぞ」
 再びグラスに水を注ぎ、またしてもラグナに押し付けた後、足元の紙袋からリンゴを取り出す。手際よくナイフで切り分け、
「食えるか?今日は これ食ったら薬飲んで寝ろ」
 八つ切りにされた一つを手に取り、軽く口に含めば瑞々しい甘さが広がった。
 医者の診察は『風邪』。
 どうやら最近子供と老人を中心に流行りだした種類ではないが、それでも症状は酷い方らしい。
 ラグナがぼんやりと半覚醒状態で診察を受けているのを見つめながら、スコールは彼らしくなく動揺していた。
 それをキロスやウォードも感じ取ったのだろう。護衛任務を『ラグナの看病』に切り替え、「ラグナを助けてやって欲しい」とスコールに告げてきた。それに対する答えは勿論「是」。
 そこから慌てて果物や栄養のあるものを片っ端から集め、ラグナを官邸の仮眠室から自宅に移し、気が付けば半日以上が立っていた。
「はー・・・・・・。ついてねぇな」
 切り分けられたリンゴをぺろりと1個分食べきり、ラグナが再びベッドに横たわる。
「久々にスコールが来てくれたから、ちょっとは時間とって一緒に居たいなぁとか、考えてたのに」
 医者から処方された薬を取り出し、
「とにかく飲んで早く治せ」
 仕方なく手に取り一気に飲み込む。
「そうするわ」
 再び体を起こして水で呷り、窓の方に目を向ける。
 厚手のペアガラスの先、どうやら外は雪らしい。道理で室内は暗いのに、どこか仄かに明るいと思った。そう感じながら、
「スコール、着替えある?」
「ああ」
 ここに来る前に買い込んだ袋からパジャマを取り出して手渡すと、
「今何時? ってか雪降ってんのか?」
「今・・・・・・。日付変わってたな。4日になってた」
 時計は0時を過ぎていた。ラグナが倒れ、眠り込んでいる間に一日が過ぎていた事になる。
 ふ、と何かを思い出したようにすっと立ち上がると、
「ちょっと待て、お湯を汲んでくる。そのままじゃ気持ち悪いだろう」
 いつになく甲斐甲斐しいスコールに、いつものラグナなら、からかいなり、惚気なりを言ったりしたのだろう。
 しかし、今日のラグナは何を返すでもなくぼんやりとキッチンに消えたスコールを待っている。
 本当ならば新年の公務を終え、官邸の職員達とわいわい楽しく新年会を催し、その後はスコールと一緒に、短くともゆっくりと2人っきりの休暇を楽しむつもりだった。
 それなのに自分のせいで全部パァだ。
 思わず自己嫌悪に浸りそうになる。
と、
「先に体拭いとけ」
 寝室に戻って来たスコールが、熱いお湯で濡らしたタオルを手渡してきた。
 着ていたパジャマを脱ぎ、急いで体を拭う。
 少し熱めのそれが実に心地よかった。
「ああ、そう言えば積もってたぞ、雪」
「へ?」
 さっき聞いてきただろう、とスコールの目が訴えている。そう言えば、
「そっか。何か外が明るいなって思ったからさ」
「昨夜から随分冷えてたからな。こんなに積もるとは思わなかったが」
 スコールも窓に目を遣る。
 余程心に余裕が無かったのだろう。カーテンを閉める事すら忘れていた窓の先は、まさに白の世界だ。
 蒼と緑と薄い紫。
 透明感のある建物に、それを塗りつぶす程の白が覆い尽くす世界は、スコールにとっても美しい景色であった。
「あ~、ますます悔しい!」
 大げさに毛布を被ると、
「とにかく寝ろ。それだけ暴れられるんなら明日は飯食べられるな」
と、冷やしたタオルを額に乗せる。その心地よい感触で、ラグナは未だ自分の体が熱を持っている事を自覚する。
「ありがとな、スコール」
「……。なら早くちゃんと治せ。その後誕生日一緒に祝ってやるから」
 思いがけぬ言葉に一瞬間が開くも、スコールの言葉に心がふわりとあたたかくなる。
 どこか申し訳なく、それでいて嬉しい気持ちに満たされたラグナは、それを噛み締める様に笑み、
「ありがとう。楽しみにしてるな」
 そっと目を閉じる。
 しばらくすると落ち着いた寝息が聞こえ始めた。
 どうやらラグナの病状はそんなに心配しなくてもよさそうだ。
 そう思いつつ、今は念のためゆっくり休んでもらおうと考え直し、窓辺に歩み寄る。
 雪が再びエスタの街を覆い隠そうと舞い降りてゆく。
 一瞬見とれそうになるも、それを振り切りカーテンを閉め、スコールは寝室を後にした。
 ラグナが元気になったら、何をして過ごそうか。
 そう、思いながら。

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もう、どれくらい探索し、戦いを続けただろうか。
時間の流れの不明確なこの世界に召喚され、どれほどの時間が経ったのだろうか。
目の前の燃え盛る炎を眺めながら、スコールはいつの間にか過ぎて行った日々を緩慢に思い浮かべていた。
彼の時間間隔でそろそろ夜明けが近いこの一時。
今テントの中で休んでいる仲間達ももうしばらくすれば起き出す頃合だろう。
と、顔を上げれば目の前のたき火を挟んだ先にあるテントから、ぼんやりとした表情のラグナがのそのそと大型のクマの様に這い出してきた。
「あ~、スコール、おはよ……」
大きな欠伸と共に間延びした挨拶をしながら長い髪を手ぐしで無理矢理まとめ始める。
器用何だか不器用何だか。
彼はスコールの呆れた目線に気付かずに、寝ぼけたまま、あっさりと手持ちの髪ゴムで一つに縛ってしまった。
「目が覚めたか?」
上目使いといえばまだ聞こえの良い眼差しで見上げれば、
「まぁ~な~」
嘘だ。まだラグナは寝ぼけている。
スコールは瞬時に判断を切り捨てた。
「それにしてもまーた暑さが戻って来ちまったな」
取り出した布で首筋を拭っている。どうやらじっとりと汗をかいている様だ。
昨日探索を切り上げたこの辺りは異様に蒸し暑い。
しかし、一定時間毎に急に寒くなるから厄介だ。
スコールが見張りをしていた時間帯がまさにそれだった。
お蔭で敵への警戒用に焚いていたたき火が随分役に立った。
しかし、その時間も過ぎてきたようだ。
「スコール、大丈夫か?」
「大丈夫だ。だが確かに暑くなってきたな」
思い切って着ていたジャケットを脱ぐ。
と、僅かだがひんやりとした空気がむき出しの腕にさらりと流れ込む。
その心地よさに小さく息を吐き、たき火を挟んだ己の前にどっしりと座りこんだ男を眺め見る。
思い出した記憶の中に彼の存在はくっきりと浮き彫りとなっている。
この世に生を受けて、そこから17年目にして初めて会いまみえたこの男こそ、自分の父親だと言う事を、スコールは何時の間にか思い出していた。
確かに元の世界で出会った姿と比べれば、確実に若いが、それでも彼の持つ空気は全く変わらない。
子供の様な面の中に、確かな大人の包容力と厳しさを併せ持つ、彼の姿を知る者は一体何人いる事か。
と、
「スコール?もしかして熱中症?」
ラグナの心配そうな声にスコールはようやく現実に戻ってきた。
少々思考を膨らませ過ぎたらしい、と頭を振り、
「違う。考え事だ」
「なら良いけど。お前っていろいろ深刻そうな考えしてそうだから、おじちゃん心配だわ」
軽く伸びをしながらそう言うラグナに、
「大丈夫だ、余計な心配するな」
ぴしゃりと返し、そろそろ朝餉の支度用に湯でも沸かそうかと立ち上がろうとしたスコール。
しかし、それは遮られてしまった。
「可愛いわが子の心配くらい、させて欲しいんだけどな」
瞬時に脳内が氷点下を迎える。それ程までにスコールの意識は冷え切っていた。
自分が記憶を取り戻したのと同様に、ラグナも思い出したのか。
どうしてその可能性を無視していたのかと、思わず己の安穏さを嫌悪する。
出来れば思い出して欲しくなかった。
例え思い出していても、ばれたくなかった。
唯でさえ他人同士だったのだ。今更そんな事意識して関りあいたくない。
どう対応していいか解らないのだ。
「そっか……」
沈黙を守るスコールを目に、ラグナはどうやら自分だけがその記憶を思い出したと判断したらしい。
「わりぃ、今のは俺が調子に乗った。お前見てるとそんな気分になっちまっただけだよ。」
ひょいと立ち上がり、手にしていた布を軽くたたみ、
「そうそう、も1個変な事言っちゃお。お前今日誕生日だろ、おめでとな」
「え?」
ようやく顔を上げたスコールの頭に手を伸ばし、くしゃくしゃと髪をかき混ぜて、
「お前に会えて本当に良かった」
まっすぐに合された視線が痛い。
翡翠の色は普段の彼が隠し持つ、仲間を見守る大人の慈しみに満ちていた。
真剣でありながら、儚いものを見つめる、あたたかくて切ない眼差し。
ラグナの言葉と視線が持つ、彼への気持ち。
それがすべてスコールの心へ注がれていた。
「……ああ」
のどの奥でわずかに搾り取られたようなかすれた声でようやく返したのが精一杯だ。
一体ラグナはどこまで記憶を取り戻した?
いや、そんな事はどうでもいい。
「さて、顔洗って、水汲んでくるな。皆起きてきたらスコールはちょっと休んどけよ」
もう一度だけ髪を梳くように頭を撫で、あっさりと踵を返すラグナ。
その足取りは今日もいつもと同じで迷いが無い。
だんだんと遠くなる彼の背をぼんやりと見つめながら、スコールの心には淡くあたたかくも刃物のような鋭さを隠し持つ嵐が吹き荒れていた。
(本当は会えて嬉しかったんだ。こんな場所でも)
いつか元の世界に帰った時、同じ言葉を彼から聞けたら。
(伝えられたら、いい)
自分も会えて良かったと、彼に伝えられる様に。
一人残され、未だ座り込むスコール。
彼の心には、小さくとも優しい思いが静かに芽吹いていた。
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