忍者ブログ
期間限定「DFF」、「DdFF」、「FF8」妄想だだ漏れブログ。 の筈が「進撃の巨人」にも手を出した腐のブログ。 初めての方はカテゴリーの『first』をご覧下さい。
[1]  [2]  [3]  [4
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

ガシャンと小さくも鋭い音が全員の耳に届く。
それはウォーリアの手の中から響き渡ったものだった。
カラカラと手の中から零れ落ちるアンプルの破片に気を向ける事無く手を広げ、氷に動きを止められたスコールに手を伸ばす。
スコールの表情はこれまで誰も見た事の無い、まるで小さな子供が怯えたかの様だった。
「スコール、すまない」
低い声がそう呟き、手甲に守られた手が彼の丸い頬に触れた。
ああ、生きている人の温度だ。
そう感じたかの様に柔らかく、愛おしそうに撫で、
「コスモスの言った通りだった」
フリオニール達の方に振り返る。ゆっくりとその動きに彼の纏うマントが追従する。
「どういう事だ?」
「彼は、コスモスとして召喚された者だ」
ラグナの疑惑に彩られた言葉をぴしゃりと跳ね除け、まっすぐに仲間達全員を見つめる。
「ちょっと待ってよ!それなら何で仲間を倒したの!」
「オニオンの言う通りだ。納得できない」
怒りに満ちた表情がいっそ痛々しい。二人だけではない、大勢の仲間が彼のせいで倒れてゆくのを目の当たりにしたのだ。
いくら女神コスモスの言葉とは言え、こんな事は納得できない。
いや、納得したくない。
フリオニールの眼差しにいくつも消えていった仲間の影が浮かんで消える。
きつく歯を食いしばっていないと今にも彼を殺すべく武器を手に取りそうだ。
と、二人の激昂を静観していたラグナが、
「操られていた、とか?」
怒りに燃え滾っていた二人の感情が瞬時に冷える。
ウォーリアだけが顔色一つ変える事無く、小さく首を縦に振った。
肯定、と言う事か。
苦々しい視線をスコールに向け、
「何てこった…。奴さん、そんな事までやり始めたのかよ」
普段飄々としているラグナはその時何処にも居なかった。
きつく握りしめられた拳から、つうと鮮血が地面に落ちた。
グローブがかすかに色を変えるのを、見た瞬間、
「ラグナ!やめろ!」
手持ちの布を取り出し、無理矢理ラグナの手を引っ張ると布をきつく巻き始めた。
止血を進めるフリオニールの目尻はかすかに赤みを帯びていた。
(こいつは情が深いから___)
誰よりも冷静さを無くしていたのは自分だと、ラグナは布で覆われた手を眺めて一人そう感じていた。
「悪い、サンキュな」
「戻ったら念のためケアルな」
ラグナの手を離し、
「教えてくれ、彼に何があったんだ」
その視線はいつも通り、「戦士」である彼のものだった。
きっと彼を道具にし、仲間達を殺める様仕向けた相手を屠るつもりなのだろう。
その意思を汲み取ったかの様に、ウォーリアは静かに語り始めた。
「まだ、オニオンナイトやフリオニールが仲間達と合流する前の事だ」
ラグナはオニオンナイト、フリオニール、そしてスコールと同様にただウォーリアの話を静かに受け止めていた。
それは、あまりにも陰惨だった。

まだ、この戦いが始まって間の無い頃だった。
仲間の一人がカオス軍3人に一度に襲われた事があった。
まだ幼く、それでも内に秘めたる力の強さと心の美しさによってこの異世界に名を呼ばれた彼は、他の仲間達に励まされながら、一生懸命戦いを続けていた。
そんな中の出来事だった。
一緒に居た者達は散り散りばらばらにされ、自分だけがまるで彼等の本当の獲物の様に追いかけまわされた。
何度も攪乱し、魔法を放って反撃していたが、受ける攻撃による怪我がどんどん体力を奪い、気が付けば血まみれのまま引きずる様に逃げ続けていた。
カオスの一人の放った強大なエネルギー弾が、ついに直撃し何メートルも先まで小さな体を吹き飛ばした。
「!」
もう叫び声すら上げられない。このまま自分は今この場で死ぬのだろうか。
ぼやけた輪郭でしか世界を捉えられない彼の足元に、銀の刃がつき立てられた。
「ひゃ!」
と、氷の様に冷たい液体が全身に浴びせかけられる。
ポーションだ!
と、感じた瞬間、先程までの怪我が嘘の様に消えてなくなり、全身を覆っていた疲労が跡形もなく立ち去って行った。
「お前は仲間の元へ行け。ここは俺が食い止める」
ゆっくりと立ち上がった視線の先に、見た事も無い形をした銀の剣を構えた青年が立っていた。
黒と、白。
その2色に愛されたかの様な出立に視線が食い止められる。
「でも、」
「気にするな、行け!」
命令し慣れている言葉は彼の背を強く押した。
「うん!」
彼は決して振り向かなかった。
ばねの様に柔軟に、強靭に足を使い、ただひたすらに走った。
急ぐのだ。自分を助けてくれた彼を助ける為に。
仲間を呼んで青年を援護するのだ。
彼は懸命に仲間の名を呼んだ。叫んだ。
見た事も無い、見知らぬ青年。
初めて会った仲間を、無くしたくなかった。
しかし。
彼の思いは届かなかった。

ラグナロク 5へ
PR
スコールは氷に動きを止められたまま意識を失っていた。
しかし、脳内では恐ろしい程に冷静に一つの記憶を再生していた。
夢、という形で。

フリオニールが渾身の思いで魔力を放出した氷に閉ざされ、右胸の出血はきれいに止まっている。
ラグナはその姿を改めて見つめ、ふと疑問をもらす。
「何でこいつの動きを止めろって、ウォーリアは言ったんだろうな」
同じ様にスコールの前に立ち、手持ちの包帯と布で簡単な手当てを済ませたフリオニールが彼の顔を覗き込む。
その顔色は青白く、暗闇に満ちた目は瞼によって今は見えない状態だ。
「解らない。もしかしたら何かを知っているのかもしれない」
ウォーリアと比較的親交のあるフリオニールでもその理由は知らされていなかった。
彼の言葉は恐ろしく明確でぶれがないが、今回の様なパターンは初めてだ。
ラグナはその閉ざされた顔に手を伸ばしながら、
「一体、お前は何なんだろうな」
その指先が触れそうな程にスコールの頬に近づく。
「待て!目覚めて抵抗したらどうする!」
フリオニールがラグナの腕を掴み、その手を彼から遠ざけた。
「ラグナ、一体何を」
まるで自分では無かったかのような感覚に、ラグナ自身も驚いている。
スコールに語りかける様に自然と出た言葉が引き金の様だった。
彼の表情を眺めていた筈が一瞬、全く違うものが見えた気がしたのだ。
その瞬間、ラグナの意識は何者かに奪われたように閉ざされ、操られるように手を伸ばしたのだった。
「あ、俺……。何か、変な感じだった」
フリオニールの咄嗟の行動がラグナの助けになった。
「変?」
彼の表情が苦く歪む。
「何か、よく解らないけど。こいつに触れたくなった」
フリオニールに掴まれた腕が少々痛いが、ラグナは今それに気を回せない。
先程の奇妙な感覚がラグナの意識にこびりついている様だ。
「とにかく、あまり近づかない方がいいな」
フリオニール自身も考えてみたが、そんな衝動は全くなかった。
再びスコールの顔を見るも、やはりそんな感じは浮かばない。
しかし、この事もウォーリアには報告すべきだろう。
そう思い、ようやくラグナの腕を離す。
「悪い、フリオ。助かった」
「気を付けてくれよ」
苦笑いの様な顔で謝ったその瞬間。
「すまない。待たせてしまった」
ようやくコスモス軍を束ねる戦士が彼等の前に現れた。
一緒にオニオンナイト、セシルも彼の後ろから駆け寄ってくる。
「ありがとな、オニオン」
ラグナ、フリオニールの様子を見てほっと安堵したオニオンナイトが軽快な足さばきでスコールの前にやってきた。
相変わらず彼は先程のラグナの奇妙な感覚など知らぬ顔で眠り続けている。
「どういたしまして」
と、視線をウォーリアに戻し、
「どうするの?」
彼を一体どうしたいのだろう。
それはラグナ、フリオニール両方の質問でもある。
それに一瞬だけ俯いたウォーリアが、オニオン達に視線を向け、
「彼を連れ帰る」
その言葉に驚きを隠せない。
スコールは、目の前の男はコスモスの仲間を片っ端から倒してきた憎むべき者だ。
「何を言ってるの!こいつは散々僕達の仲間を殺してきたんだよ!」
オニオンの感情が爆発する。それに吊られるようにフリオニールも、
「理由を教えてくれないか。じゃないと俺も納得できない」
セシルとラグナは驚きの為か声を出せずにいる様だ。
しかし、ウォーリアには想像通りの事だったのだろう。
溜息をつくかの様に息を吐き、
「彼には確かめたい事がある」
と、手の中に一つのアイテムを呼び出した。
「ウォーリア、これは何?」
セシルがその手の中のものを指さす。
薄い黄色の親指程の大きさのビン。
液体が入っているであろう事は想像できたが、コルクの様な蓋となるものはついていない。
例えるならアンプルの様なそれは、ここに居る彼ら全員が初めて見るものだった。
ウォーリア自身もこれまで見た事の無かったアイテムの、細くくぼんだ部分を折る。
パンと小さな音を立てて二つになったそれの片方をそのままスコールに向けて振りかけた。
と、その瞬間に彼の瞼が動き、静かに開かれる。
そこにはあの感情の無い闇色は無く、灰色の混じった蒼が彼等を見据える様に存在していた。
「ウォーリア!」
「大丈夫だ」
焦る声をあっさり流し、スコールを見つめる勇者。
その前には、意識を取り戻したスコールが今まさに何かを発しようと口を開いたところだった。
「俺は、何をしていた……?」
スコールが絞り出したその言葉に苦く口元をゆがめるウォーリア。
ラグナはその表情を見、スコールを再び見つめる。
ウォーリアの真意と、スコールの言葉。
ラグナはただ疑問の渦中、一人さまようばかりだった。

ラグナロク 4へ
荒い息で駆け巡るオニオンナイト。
ここは彼の宿敵である暗闇の雲の存在する場所だ。
しかし、今彼が体勢を整え、時に魔法を繰り出しながら翻弄しているのはかの相手ではない。
スコール・レオンハート。
カオスの一員である彼はオニオンの考えていたよりもずっと俊敏に動く相手だった。
時に空間を変え、ほのかに光るスロープの様なそれを使って彼の上空へ移動し、巨大な炎の魔法を発現させる。
「…っ、燃えちゃえ!」
腕を勢いよく振り、彼の立つ足場をめがけて飛んだ火の玉は確実にスコールを捉えた。
勢いよく爆発するそれに吹き上がる熱風。
アシストをしていたラグナ、彼等と共に行動していたフリオニールがその熱さから身を守るように腕で顔を庇う。
「やった、か?」
熱風の中でそう確認するフリオニールに、オニオンも彼に一矢報いたと確信した。
しかし、
「うぉぁ!」
ラグナの焦りすぎた叫び声に二人がスコールのいた場所を再び見た瞬間。
「弾けろ」
ひやりとする程に冷静な声がオニオンの眼前に突きつけられる。
「!」
円形の炎に炸裂する音。
確実にスコールの攻撃はオニオンを狙っていた。
「オニオン!」
フリオニールの咄嗟の声が何故か静かにはっきりと爆音の中から聞こえた。
一体どうやって彼はオニオンの放った魔法から身を守ったのか。
そう思う暇すらなく、スコールの攻撃はオニオンに相当な深手を与えた。
薬莢の飛び交う、煙幕の中にオニオンナイトはかろうじて立っていた。
しかし、彼のトレードマークの様な赤い兜はどこかに飛び去り、体を庇った両腕にはいくつもの深い火傷が夥しく広がっていた。
「当たれ!」
煙幕の中の彼をようやく発見したフリオニールが怒りに任せてスコールめがけて矢を放った。
その瞬間。
「!?」
彼の右胸から深紅の液体がまっすぐに軌跡を描いて飛び散った。
ちょうどスコールを挟んだ先にいたラグナが手持ちの銃で彼の動きを止めたのだ。
怯み、足元がおぼつかなくなりそうな体を何とか持ちこたえているスコールに、
「フリオ!」
ラグナの声で放たれたフリオニールの魔法でスコールの体は足元から一気に氷に固定される。
胸元まで氷に固められ、もがく勢いすら失いそうになるスコール。
その様子をやっと意識がはっきりしてきたオニオンナイトが見上げる。
闇色に染まった眼の勢いがまるでスイッチが切れたようにみるみるなくなってゆく。
「大丈夫か?」
「うん、何とか」
そう答えるオニオンだが、深い傷や火傷は確実に彼の動作から素早さを奪っている。
「ほい」
フリオニールの後から警戒を解ききらないままにやってきたラグナが、手持ちのポーションをオニオンに渡し、
「ありがとう」
さすがにオニオンも現状を解っているのか、無理をする事無く彼の渡してきたポーションを使う。
「眠った、みたいだな」
「動きを止めるだけで3人がかりか」
スコールの深い闇をたたえた目が瞼で閉ざされ、ようやく深く息を吐いたラグナに、フリオニールが疲労に満ちた声で同じくため息を零す。
彼等は偶然スコールと戦っていたわけではない。
複数のメンバーでパーティを組み、いつ襲撃にあっても最悪敵から逃げる事が出来る様にしていたコスモス軍。
その中で偶然スコールを見つけた3人は、彼をそのまま尾行し、隙を見て一気に攻撃に出たのだった。
足の速いオニオンナイトを囮兼メイン相手として、残りの二人でアシストしながら彼の動きを止める。
しかし、スコールの攻撃は的確かつ、決して焦って戦う事をしない。
相手の動きをきっちりと読み、それを把握して返す。
それによりオニオンによる攪乱は厳しさを増し、彼が深手を負う事でようやく勝機を見出し彼を止める事に成功した。

「とにかくウォーリアに報告だな」
「そうだね」
彼には数々の仲間達を倒された恨みがある。
しかし、彼等コスモス軍のリーダーは何故か「スコールを倒せ」とは言わなかった。
「動きを止めろ」とだけ。
一体、彼にどんな策があるのだろうか。
そもそも策を巡らせるには似合わない彼の言葉に、他の仲間達も、オニオン達も戸惑った。
それでも彼が仲間達に不利益になる事はしない。
これまでの彼の言動を信じ、3人はスコールの動きを止め、その命を奪う事はしなかったのだ。
「オニオン、頼めるか?」
さっきポーションで治療してきついかもしれないが、と心配そうなフリオニールに、
「大丈夫だよ。僕の方が皆より足が速いからね」
にっこりと笑い、彼の気遣いを受け止めた。
「気を付けろよ」
「解ってるよ、ラグナ。じゃ、行ってきます」
そう残し、ぱたぱたと駆け出したオニオン。
少々心配そうにその後ろ姿を見つめるフリオニールと、再びスコールを見上げるラグナ。
相変わらず彼は愛剣ごと氷に閉ざされている。
その姿を見ながら、
「――」
何かを言いたそうにし、視線を外す。
その様子を見ていた者がいる。
彼等から随分離れた場所に立つ柱の上に、彼女は優雅に腰掛けていた。
妖艶な笑みを浮かべて彼等を見ながら、
「さぁ、私の為に踊りなさい」
そう残して黒い羽を浮かばせてこの空間から消え去った。


ラグナロク 3へ
久々の更新で失礼します。蘇芳です。
ひょこひょこ練っていた(5/4配布ペーパー参照)「スコールさんがカオス組の輪廻ネタ」を続き物でやっていこうと思います。
大体何話と決まってないのですが、たぶん10話は超えないと思います。
息切れしない、必ず完結するが目標ですが、よろしければおつきあい下さると嬉しいです。

【注意点】
1 アルスコの様な表現が混じりますが(1話・他)あくまで表現だけです。
2 過去の輪廻が舞台なので捏造がいつも以上に混ざります。(例:ゲーム本編で登場しなかったキャラも想定していますが、特定の名前は出てきません。)
3 ラグスコが基本ですが、別のキャラが混じるかもしれません。

大丈夫な方は『つづき』からどうぞ。
この次元はいつも遠い宇宙を想起させる。
脳裏にふと浮かんで消えたそれを一瞬懐かしく感じ、自分らしくなくぺたりと地面に座り込む。
中央に浮かぶ巨大な岩の様なものを中心に、そこはほの暗く、淡い光に包まれた場所だった。
眩い星に視線を映せば急に背中にあたたかな重みが加わった。
「どうした?スコール」
硝煙の匂いがふわりと浮かび、自分よりも強い腕がきつく背中から伸ばされて抱きしめられる。
何故だろう、その腕を振りほどく気になれない。
それよりも深く心に満ちるのは、先程一瞬感じた懐かしさに隠された痛みだ。
「ラグナ」
この空は、この暗闇は、体中を包むような星の瞬きは、スコールの何かを暴くかのように心をざわめかせる。
「大丈夫か?」
「解らない。でもたぶん、俺はこの星空を知ってる気がする」
視線は空に向けたまま、絡められたラグナの腕に触れ、彼の袖を強く握る。
手の色が変わりそうなほどにきつく。
それに気づき、答える様になお強く抱きしめてくれるラグナに、すがるようにもたれ掛り、
「暗い星の中で、俺は手を伸ばしたんだ」
誰に?
どうして?
それが、解らない。
「スコール、それって」
「これ以上は思い出せない」
俯いてしまったと同時に一瞬にして腕の力が抜け落ちた。
「なら、それでいいんじゃねぇか」
この次元に来た瞬間、急に座り込んでしまったスコールに駆け寄った時、そして今、彼の背中がいつも以上に小さく見えた。
このままどこかに消えてしまうのではと焦ってしまう程に。
「ゆっくり思い出せばいい」
彼の耳元にそっと嘘を並べ立てる。
”思い出せ”なんて嘘だ。
さっきからスコールの声が、どこか遠く他人の様にラグナには届いていた。
まるで見知らぬ人の様に、哀しい思いをひた隠している大人の様に。
”さみしい”と声に出せずに一人で泣く子供の様に。
一体誰を追おうとした?
ラグナの腕の中のスコールは未だ抵抗も無く、その場所に留まっている。
小鳥が羽を休めるように。
ゆっくりとスコールが深くもたれてくる。その重みに任せたままラグナも座り直して空を見上げる。
スコールがそっと空を見、
「そうだな」
ラグナの片腕に再び手を伸ばし、頬を寄せる。
スコールの好きにさせたまま、
「珍しいのな、お前が甘えてくるの」
少しだけ茶化す様な色味を足してみる。
ラグナにとって今の状況はスキンシップとしては甘くてうれしい。
しかし、内情は苦くてたまらない。
一体誰がその心にすんでいるのか。
今は知る必要のない、それに深く興味をそそられてしまった。
スコールが自分を選ばないのは構わない。
しかし、彼にそのような顔をさせる相手がいる事が、ラグナにとって驚きであった。
だから、それを少しでも払拭させたかった。
この甘い状況ごと。
「たまにはいいだろ」
俺は単純だ。
ラグナは己をそう評価した。
彼は、今、自分を必要としてくれている。
なら、いいじゃないか。
誰が彼の心にすんでいても。
諦めるのは、まだ早い。
「じゃ、俺も甘える」
きつく抱きしめ直し、ふわりと唇を己のそれでかすめ取る。
今度こそ殴られるか、と少し思いつつ顔を上げ、スコールを見つめる。
その瞬間、ラグナは深く理解した。
彼の心を捉えていた何かが、誰かが解っても、きっと自分は彼を諦めきれない。
スコールが儚い程の眼差しで、ラグナを見て、微笑んだ。
この笑みが心にある限り、スコールを諦められないと。
この衝動を抱えてこの世界を生きるのだと。
カレンダー
02 2024/03 04
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31
プロフィール
HN:
橘 蘇芳
性別:
女性
バーコード
カウンター
Twitter
忍者ブログ [PR]