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期間限定「DFF」、「DdFF」、「FF8」妄想だだ漏れブログ。 の筈が「進撃の巨人」にも手を出した腐のブログ。 初めての方はカテゴリーの『first』をご覧下さい。
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もう、どれくらい探索し、戦いを続けただろうか。
時間の流れの不明確なこの世界に召喚され、どれほどの時間が経ったのだろうか。
目の前の燃え盛る炎を眺めながら、スコールはいつの間にか過ぎて行った日々を緩慢に思い浮かべていた。
彼の時間間隔でそろそろ夜明けが近いこの一時。
今テントの中で休んでいる仲間達ももうしばらくすれば起き出す頃合だろう。
と、顔を上げれば目の前のたき火を挟んだ先にあるテントから、ぼんやりとした表情のラグナがのそのそと大型のクマの様に這い出してきた。
「あ~、スコール、おはよ……」
大きな欠伸と共に間延びした挨拶をしながら長い髪を手ぐしで無理矢理まとめ始める。
器用何だか不器用何だか。
彼はスコールの呆れた目線に気付かずに、寝ぼけたまま、あっさりと手持ちの髪ゴムで一つに縛ってしまった。
「目が覚めたか?」
上目使いといえばまだ聞こえの良い眼差しで見上げれば、
「まぁ~な~」
嘘だ。まだラグナは寝ぼけている。
スコールは瞬時に判断を切り捨てた。
「それにしてもまーた暑さが戻って来ちまったな」
取り出した布で首筋を拭っている。どうやらじっとりと汗をかいている様だ。
昨日探索を切り上げたこの辺りは異様に蒸し暑い。
しかし、一定時間毎に急に寒くなるから厄介だ。
スコールが見張りをしていた時間帯がまさにそれだった。
お蔭で敵への警戒用に焚いていたたき火が随分役に立った。
しかし、その時間も過ぎてきたようだ。
「スコール、大丈夫か?」
「大丈夫だ。だが確かに暑くなってきたな」
思い切って着ていたジャケットを脱ぐ。
と、僅かだがひんやりとした空気がむき出しの腕にさらりと流れ込む。
その心地よさに小さく息を吐き、たき火を挟んだ己の前にどっしりと座りこんだ男を眺め見る。
思い出した記憶の中に彼の存在はくっきりと浮き彫りとなっている。
この世に生を受けて、そこから17年目にして初めて会いまみえたこの男こそ、自分の父親だと言う事を、スコールは何時の間にか思い出していた。
確かに元の世界で出会った姿と比べれば、確実に若いが、それでも彼の持つ空気は全く変わらない。
子供の様な面の中に、確かな大人の包容力と厳しさを併せ持つ、彼の姿を知る者は一体何人いる事か。
と、
「スコール?もしかして熱中症?」
ラグナの心配そうな声にスコールはようやく現実に戻ってきた。
少々思考を膨らませ過ぎたらしい、と頭を振り、
「違う。考え事だ」
「なら良いけど。お前っていろいろ深刻そうな考えしてそうだから、おじちゃん心配だわ」
軽く伸びをしながらそう言うラグナに、
「大丈夫だ、余計な心配するな」
ぴしゃりと返し、そろそろ朝餉の支度用に湯でも沸かそうかと立ち上がろうとしたスコール。
しかし、それは遮られてしまった。
「可愛いわが子の心配くらい、させて欲しいんだけどな」
瞬時に脳内が氷点下を迎える。それ程までにスコールの意識は冷え切っていた。
自分が記憶を取り戻したのと同様に、ラグナも思い出したのか。
どうしてその可能性を無視していたのかと、思わず己の安穏さを嫌悪する。
出来れば思い出して欲しくなかった。
例え思い出していても、ばれたくなかった。
唯でさえ他人同士だったのだ。今更そんな事意識して関りあいたくない。
どう対応していいか解らないのだ。
「そっか……」
沈黙を守るスコールを目に、ラグナはどうやら自分だけがその記憶を思い出したと判断したらしい。
「わりぃ、今のは俺が調子に乗った。お前見てるとそんな気分になっちまっただけだよ。」
ひょいと立ち上がり、手にしていた布を軽くたたみ、
「そうそう、も1個変な事言っちゃお。お前今日誕生日だろ、おめでとな」
「え?」
ようやく顔を上げたスコールの頭に手を伸ばし、くしゃくしゃと髪をかき混ぜて、
「お前に会えて本当に良かった」
まっすぐに合された視線が痛い。
翡翠の色は普段の彼が隠し持つ、仲間を見守る大人の慈しみに満ちていた。
真剣でありながら、儚いものを見つめる、あたたかくて切ない眼差し。
ラグナの言葉と視線が持つ、彼への気持ち。
それがすべてスコールの心へ注がれていた。
「……ああ」
のどの奥でわずかに搾り取られたようなかすれた声でようやく返したのが精一杯だ。
一体ラグナはどこまで記憶を取り戻した?
いや、そんな事はどうでもいい。
「さて、顔洗って、水汲んでくるな。皆起きてきたらスコールはちょっと休んどけよ」
もう一度だけ髪を梳くように頭を撫で、あっさりと踵を返すラグナ。
その足取りは今日もいつもと同じで迷いが無い。
だんだんと遠くなる彼の背をぼんやりと見つめながら、スコールの心には淡くあたたかくも刃物のような鋭さを隠し持つ嵐が吹き荒れていた。
(本当は会えて嬉しかったんだ。こんな場所でも)
いつか元の世界に帰った時、同じ言葉を彼から聞けたら。
(伝えられたら、いい)
自分も会えて良かったと、彼に伝えられる様に。
一人残され、未だ座り込むスコール。
彼の心には、小さくとも優しい思いが静かに芽吹いていた。
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