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期間限定「DFF」、「DdFF」、「FF8」妄想だだ漏れブログ。 の筈が「進撃の巨人」にも手を出した腐のブログ。 初めての方はカテゴリーの『first』をご覧下さい。
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「それじゃ、友達できないぞ」
目の前の男にそう言われた時、「余計なお世話だ」と自然に心中で悪態をついた。
霞む意識の中で、今更そんな事を思い出したのは何故だったのか。
もし俺に記憶が正しく残っていたなら。
・・・残っていたなら。



目の前には、鮮やかな花と緑の草原。
青い空と、眩しい光。
先程まで仲間達といた黒くて禍々しい混沌の空間は嘘の様に消え去り、仲間達はその美しく平和な景色に一様に見蕩れていた。
そして、ふと気付く。
戦いは終わったのだと。
「お別れ、か・・・」
その言葉をきっかけに、一人、また一人と己が世界へと帰ってゆく。
そして、彼も。
「また、共に任務を果たすのも良いかもな」
目の前の白い羽を指先で掴み、浮かび上がる記憶に小さく笑みをこぼす。
そして、彼はその空間から消え去った。
自覚の無い小さな記憶を棘の様に持ち帰って。



悪しき魔女を倒した英雄の帰還は思いのほか静かなもので、気がつけば懐かしいガーデンでの日常を忙しくもこなす日々が帰ってきた。
そんな毎日の中、一通のメールに目が留まる。
折しも今は夕方過ぎ、副指揮官としてスコールをサポートするのにもすっかり手馴れて、かつての「生徒と教師」のようなやりとりすら頻繁に見られるようになったキスティスも今は指揮官執務室を退室している。
最近細かな業務は粗方片付いたので、きっと彼女は戻らずこのまま自室に帰るだろう。
そう考え、そのメールを開封した。
彼、スコールが一瞬メールの開封をためらったのには訳がある。
送信者が「ラグナ・レウァール」であったからだ。
かのエスタの大統領閣下が直接メールをスコールに寄越す事は数としてはそんなに頻繁ではない。
しかし、その内容は彼の仲間達に読まれるとからかわれる事必至なものばかりだ。
どの文面にも、彼がスコールを大切に思っている事が手に取るように分かる言葉をこれでもかと並べているのだ。
まるで小さな子供に対する、親の過剰な愛の様だと、第三者が読んだならきっと誰もがそう思うだろう。
しかし、その言葉には裏がある。
それは彼等しか知らない事であり、彼等以外は知る必要の無い事情が込められている。
改めて、その事実を思い出しながら文面に目を走らせる。
そこにはいつも以上に愛にあふれた言葉と、追伸の様な最後の1行、

「あの異世界の記憶、覚えてるか?」

この意味を正しく理解するのに、時間は必要なかった。
それもその筈、彼が仲間達と共に悪しき魔女を倒し、この時代に帰ってきたのはおよそ1週間前。
それはあくまでこの世界の仲間達の認識だが、スコールにとっては己が世界に戻る前、全く違う世界どうしの仲間と共に秩序の女神の召喚を受け、対となる混沌の神を倒した記憶の事だ。
しかし、なぜラグナがそんな事を言い出すのか?
彼にはこの事は一切話していない筈だ。
一体、何故?
悪戯にしては、スコールにとって符号が合い過ぎる。
まさか、彼もその場にいたのだろうか?しかし、思い出す記憶に彼の姿は浮かばない。
スコールは思わず、メールの返信文を作成する為、新しいフォームを表示させた。
もし、彼が言いたい事がスコールの思う「異世界」の事なら。
ラグナは決して悪戯にスコールの不安を駆り立てる事はしない。
それでも確かめたい。
このメールの一文の真意を。
だから、こんな書き方しか出来なかった。
無機質な音を立てて用件のみのメールを作成し、彼は無言で送信ボタンを押した。
一瞬後には画面に「メール送信完了」を示すメッセージウィンドウだけが示され、薄暗い部屋に明々と小さな光が浮かんでいた。

「・・・やっぱり記憶、無いんだな」
エスタ。
大統領執務室にこぼされた声は、返答も無く空気に溶けた。
スコールがアルティミシアを倒し、全員が無事にこの世界、この時代に戻ったと報告を受けたその日の夜に、まるであふれ出すかのように思い出された記憶にラグナは翻弄された。
まだ年若い自分が、見たことも無いまるで御伽噺の絵本のような甲冑を身につけた仲間や、強力な魔法を操る仲間、この国では特にもう用いる事のない武器を自在に操る仲間、それとは逆に己が国より科学の進んだ武器を操る仲間、それこそ挙げれば限の無い、皆個性的で心の強く温かな仲間と共に戦いの旅をしていた事。
その中に、スコールがいた事。
彼と一緒に世界の断片を歩いた事。
時に呆れられながらも、決して彼は己から自分と離れる事はしなかった事。
彼と想いを重ねる事こそしなかったものの、今のように愛していた。
そして、彼等に未来を繋ぐ為とはいえ、スコールを残して己が消滅した事。
まるで、夢のような事実。
何故、この年になって思い出したのだろうか。
そう思いながらも、本人には面と向かってきちんと聞けなかった。
だからメールという手段を使ってみたのだ。これなら彼がもし覚えていてもいなくても構わないし、また彼が誤魔化す事も白を切ることも出来る様に。
それだけ恐れたのだ。
あの世界のスコールも大切で愛していたから。
自分のせいで彼が傷ついたのではないかと思って。
しかし、
「覚えてない。」
それが彼の返事だった。
しかし、その言葉に込められた不安と思いは受け取った。
きっと彼は、スコールはラグナの事を覚えていない。
でも、このメールで疑問を持ったはずだ。
なぜ、この話をラグナが振るのか。
「逃げずに、話すのが良いんだろうな・・・」
もっと、きちんと受け止めよう。
彼の不安を。彼の思いを。
小さな決意を胸に、彼は再び執務に没頭し始めた。

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