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期間限定「DFF」、「DdFF」、「FF8」妄想だだ漏れブログ。 の筈が「進撃の巨人」にも手を出した腐のブログ。 初めての方はカテゴリーの『first』をご覧下さい。
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夏の夕暮れ。

官邸の屋上は密かな息抜きの場所としてすでに記憶済みであるため、ここに居れば目当ての人物が現れる可能性は高い。
今日は会議も何もなかった筈。
と、先日確認した大統領閣下のスケジュールを反芻しつつ、遠くに沈む夕日を見つめる。
思えばこんな時間を過ごすのは久しぶりだ。
任務の為、ガーデンを出ることはあっても、大抵すぐに戻りデスクワークに勤める毎日。
卒業まで2年を残し、ここまま指揮官として過ごすのかと疑問を浮かべたことなど無いといえば嘘になる。
別に今の状況に不満があるわけではない。
しかし、ここに訪れるとつい、いろいろとガーデンでは考えないようにしていたことが浮かんでしまう。
将来や、自分と彼との関係や、未来。
それと、最近見た夢。
相変わらず声の主は思い出せないが、その代わり夢の中に世界の断片が浮かぶようになった。
白い場所、高所の城、オレンジのクリスタル、碧の浮島・・・。
どの場所も一瞬写真の様に夢から切り取られて鮮やかに思い浮かぶのに、現実味がない。
勿論夢だから当然だ。
しかし、心の片隅に残る良く解らないものが否定をする。
「それは現実だった」と。

「やっぱりここだったか」
後ろからかけられた声に振り向けば、予定通りに目当ての人物が疲れを一遍も見せずに立っていた。
相変わらずのシャツに洗いざらしのズボン。
ラフすぎる格好に、冷淡な思考と判断力を隠し、人好きのする笑みを浮かべた彼が近づく。
かき上げられた前髪がゆるりと風をはらんで流れる姿につい、視線が止まる。
「夕方の休憩時間はここなんだろ。もう覚えた」
わざとらしいため息をおまけに付けて、誤魔化す様に視線をそらせば、苦笑したように返されるやわらかい声が耳に優しく届く。
「ここなら誰も来ないからな。お前以外」
本来なら要人であるため、警戒を怠るべきで無いはずの目の前の男は、そんなことに頓着する様子も無く隣に立ち、手すりに手をかけて沈み行く夕日に視線を投げる。
世界がオレンジ色に染まる。
暴力的な程に無機質な町並みをオレンジから燃える赤がまぶしく照らす。
彼の、守る、世界。
「最近、ちゃんと寝てるか?」
「え・・・・・・」
不意に心配そうな言葉がかけられた。
「夜明けあたりに居なくなって、俺が起きる時間まで戻ってこない」
視線は遠い空を見つめるのに、
「気づいてるか?ここ最近のお前、ちょっと目が赤いの」
その手がそっと肩に触れて、視線を繋ぐ。
まるで捕われた様に視線が外せない。黙って彼の動きを受け入れる。
「大丈夫だ。」
(ちょっと、夢見が悪くて・・・。何て言えるわけない)
「本当だな?」
肩に置かれた手をそのまま引いて、動けない体を抱え込む。
真夏の夕方の、緩やかな風が気まぐれに吹く屋上。
下がりにくい気温の支配する中に、触れ合う箇所で共有する体温。
閉じ込められたのに、心地よい心音。
「ああ」
ここは安心する場所、改めてそう感じる。
「なら、いいんだ。でも何かあったら言えよ」
「わかってるよ」
自然に彼の背に手を伸ばし、いつもならすることの無い甘えが今日はなぜか自然に動きに繋がる。

きっと、今夜はあの夢を見ない。
漠然と、そんな気がした。


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