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期間限定「DFF」、「DdFF」、「FF8」妄想だだ漏れブログ。 の筈が「進撃の巨人」にも手を出した腐のブログ。 初めての方はカテゴリーの『first』をご覧下さい。
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それはいつものようにひずみを探索し、戦闘を終えた後の事だった。
その戦いで手に入れたアイテムを分別していた手を急に止め、
「あ、俺今日誕生日だった」
あっけらかんとした声でラグナがそうのたまった。
「あ、そうなのか?」
「・・・だから何だ?」
「へー、今日なんだ。おめでとー」
「・・・・・・・・」
隣ですぐに使わないアイテムを袋に詰めていたフリオニール、アクセサリの装備を変更していたライトニング、自分達が今休憩に使っている草むらにイミテーションが隠れていないか見張っていたジタン、同じくスコールがそれぞれラグナの言葉に返したのがそれだ。
フリオニールやジタンは好意的だが、残る二人は『面倒くさい』と言わんばかりの態度を隠す事も無い。
しかし、そんな二人を気にするラグナではない事などすでに皆承知の上だ。にっこり笑い、
「お、ありがとなー、ジタン」
アイテムを分別していた手を再開しながら礼を返せば、ジタンも笑って、
「そうだ。これラグナにやるよ」
軽い足取りでラグナに駆け寄り、ひょいと『ラストエリクサー』を手渡した。
「いいのか?これなかなか手に入らない奴だろ?」
アイテムのラベルを確認し、さすがにラグナが遠慮する。この世界でも『ラストエリクサー』は貴重品だ。
しかし、
「いーんだって。さっきの戦闘で運よく2個も取れちゃったんだよねー」
思わず返そうとするラグナの手を遮り、にっと深く笑い返せば、
「解った。大事に使わせてもらうぜ。ありがとうな」
改めて手の中のそれを大事そうに握り締める。
「俺からはアイテムとかじゃないけど、今晩は何かうまいものでも作るよ」
それでプレゼントって事にしてくれないか、と人好きのする青年の気遣いがラグナにはとても嬉しい。
ジタンの隣に来たフリオニールに、
「ありがとな、期待してるぜ」
それにほっとしたような笑みをこぼすフリオニール。
穏やかな三人のやり取りに少々置いてけぼりを食らったような気分になるスコールだが。
「私からも特にプレゼントはないな」
取り替えたアイテムをフリオニールに渡しながら、クールなアルトが耳に届く。
「誕生日おめでとう、ラグナ」
口調こそいつもと同じながらも、自然と掛けられた言葉。
すっと立ち上がった彼女を見上げれば、いつからか自然と見られるようになった彼女の柔らかな眼差しが自分を見ていた。
「へへっ、ありがとな」
こういった彼女の気遣いをこれまでの旅で知るようになってきたラグナにとって、それはとても特別な言葉として耳に、心に届いた。
子供のように笑うラグナに一瞬照れの様な気恥ずかしさを覚えつつも、すっと視線を遠くに投げ、
「そろそろここを離れるぞ」
見ればイミテーションが3対、相変わらずのキラキラとしたガラスの光をこぼしながらまるでこのあたりを哨戒でもするかのごとくうろうろしている。戦闘に持ち込まれても特に問題は無いが、不要な戦いを避けるのも戦術の一つだ。ただでさえ、自分達の居るこの場所は比較的イミテーションの力が強いと仲間内で噂になっている。ひずみの中ならともかく、もし高レベルの相手なら面倒だ。
ライトニングの声にスコールが同じ方向を向き、
「そうだな」
その声を皮切りに、5人はイミテーションに気取られる事の無い様、そそくさとその場を立ち去った。

 *

その夜。
「スコールはラグナに何にもしないのか?」
夜間の見張りを買って出たフリオニールに、スコールが交代の為声を掛けようとした時だった。
「別に」
そっけなく返したつもりだった。心の中ではまさかジタンやフリオニールだけでなく、ライトニングまであの時ラグナに祝いの気持ちを言葉や態度で見せるとは思っていなかった。
ここは戦いの場であり、それ以外の言動は己や仲間の不利益に直結するという理由から、特に彼のその言葉に返答する必要は無いと考えた。しかし、今こうなっている現状は、己の行動とタイミングの結果とは言え少々気分が良くない。しかもあの後、ラグナから催促めいた事は何一つ聞かれない。
「でも言葉だけでも良いんじゃないか」
ラグナはすぐに喜んでくれるぞ。
目の前に焚かれた火から少し心配そうに視線をスコールに向ければ、
「だーいじょうぶだって、フリオニール君」
携帯用の毛布を肩からかぶったラグナが二人の後ろから近づいてきた。退役しているとは言え、こういうときは彼はやはり軍人だ。足音はおろか、気配すら感じさせる事無くラグナはスコールの横に陣取った。
「スコールはちゃんと俺の誕生日を祝ってくれてるから」
自信満々の笑みをフリオニールに向けると、
「そうなのか?」
「ああ」
スコールが逃げられないように肩を抱き、深く頷く。
「ならいいんだ」
ほっとしたような表情を浮かべるフリオニールに、
「変な気を使わせちまったなー」
と返せば、「気にしてない」という眼差しと「おやすみ」と言う言葉が掛けられた。
そうしてフリオニールが立ち去った焚き火の前、ただスコールだけが居心地の悪さを感じている。
しかし、
「気にする事なんてねぇよ」
肩を抱いていた手に力を込め、
「お前からの言葉はちゃんと聞こえたし、これから先も楽しみにしてるから」
何をこの男は言い出すのか。
スコールの機嫌はみるみる急降下してゆく。
確かにフリオニールの言うとおり、言葉だけでもかけるべきだったのかもしれない。しかし、今こうして居る状況で、普通なら一言、「おめでとう」とでも言ってやれば良いことは解っている。
しかし、何故それをしてやらなければならないのだ。ただでさえにぎやか過ぎるこの男に疲労を与えられている自分としては、むしろこっちが気を使って欲しい気にすらなってしまう。
悶々と、ともすれば身勝手にも取れることを脳内でぶつぶつ呟いていた感情が頂点を迎えてしまったようだ。
「俺は何も言ってない」
拗ねるように苛立ちをあらわにするかのごとくこぼしたスコールに、それでもラグナが続ける。スコールは顔を上げることも無く、ただその声を流すように聞くだけだ。
いや、とりあえず我慢をする事で何とかこの話を済ませようと思ったのかもしれない。
「それでも良いさ」
俺が楽しみにしているだけだから。
(何で勝手に俺がそんな事を言った事になってるんだ。そもそもこれから先って何なんだ)
うつむいたまま脳内でぶつぶつ愚痴のような事を考えているスコールは、ラグナの被っている毛布に視界を遮られていた事も手伝って、今のラグナの様子に気がつかなかった。
まるで子供をなだめるような声音で話すラグナの視線が遠い空を見詰めていたのを。
その表情が、あまりにも穏やかであたたかく、哀しいほどに切なそうだった事を。

 *

「って事を思い出したわ」
もうすぐ夜明けを迎える真冬の自宅。ベッドの端に転がって、どこか懐かしそうに天井を見詰めながらラグナがこぼした。
「・・・」
寝煙草禁止の為、どこか口さびしそうにぼんやりと独り言のように語られたのは、遥か遠い異世界での記憶。
神々の闘争での記憶を何のきっかけか引っ張り出し、そろそろ起床しなければと思いながらも、そのぬくもりに負けそうになっていた自分にそれを延々と聞かせていた男の声がようやく途切れた。
最初こそ睡魔に負けそうになりながら聞き流していたものの、だんだんとスコールもそれを思い出してしまい、最後にはすっかり目が覚めきってしまった。
「スコール」
(いつまで俺のベッドに陣取るつもりだ)
「ありがとな」
(は?)
「お前は声に出さないだけだって、あん時から知ってるから」
恨み言でもない、自然な会話の続きとして彼は言葉を綴る。
しかし、それが逆に自分に対してまるでもう諦めてしまっているような言葉に聞こえてスコールは苛立ちを新たにする。
(そうやってあんたらしくない言い方されるほうがよっぽどムカつくんだ!)
「だから、って」
ばっと体を起こし、未だに寝転がって天井を見るとも無くぼんやりとしていたラグナに、
「誕生日おめでとう!」
苛立つ感情そのままに祝いの言葉を吐き出して、その勢いに任せてラグナの唇に食らいつく。
乱暴なキスを一瞬だけぶつけ、すっと離して起き上がればびっくりした表情のまま固まっているラグナが目に映った。
我ながら子供っぽい行動だが、それでも思いのほかすっきりした気分でベッドから降り、
「これまでの分全部だ」
声高らかにそう残し、さっさと部屋を後にする。冬の寒さにどんどん体温が奪われてゆくような感覚に思わず身震いするも気持ちだけは妙に高揚し、そして清々しい。
そんなスコールをただ見送る事しかできなかったラグナだが、
「可愛いなぁ、相変わらず」
胸の奥から湧き上がる笑みが止められない。まさか彼があんな可愛い反撃を食らわせてくるとは思わなかった。あの時は記憶がぼんやり戻り始めた頃だったから、つい意地を張るわけではなかったが、彼の過去を考えてあんな風に言ってしまった。
ところが今はどうだ。少々拗ねたようなフリを見せ、あの時と同じような態度を彼に見せれば、こんなに鮮やかで解りやすい感情を見せてくれる。
「ありがとな、スコール」
そう呟き、彼の居なくなったベッドにちゃっかりもぐりこんでお邪魔する。こうしていればまた拗ねるなり、怒るなり、様々な感情を見せてくれるだろう。
今日はプレゼント代わりにそうやって過ごすのも悪くなさそうだ。
そんな事を思いながら、スコールが来るであろう時間まで悪戯気分でまどろむ事にした。

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