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期間限定「DFF」、「DdFF」、「FF8」妄想だだ漏れブログ。 の筈が「進撃の巨人」にも手を出した腐のブログ。 初めての方はカテゴリーの『first』をご覧下さい。
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「スコールさんって優しいんですね」
隣で杖を大切そうに抱えた少女がそう言ってにっこり笑った。

「見張り、替わりますよ」
『夢の終わり』という、聞き様によっては何だか物騒な印象を受けるこの場は、常に夜の帳に包まれている。
中央の巨大な剣を模したオブジェに立ち、崩れ落ちそうな円周上の足場は「観客席」なのだと、コスモス軍の年長者であるジェクトがわずかな記憶を頼りに説明してくれた事を思い出す。
その巨大な剣を背もたれにし、カオスの連中やイミテーションの出現を待ち構えるかのように座り込んでから何時間経っただろうか。
気がつけば隣に一人の少女が立っていた。
彼女は「ユウナ」とい名で、自由自在に召喚獣を呼び出して戦うという、可憐な容姿の中に秘めた覚悟を持つ戦士の一人だ。
長いスカートのような服を両手で押さえながらちょこんと隣に腰掛け、
「おはようございます」
オッドアイの目がにっこりと笑みを形作る。
「・・・よく眠れたか」
「はい。おかげさまで」
視線をわずかに彼女に向ける。
この「任務」が始まったばかりの頃は、他の仲間から「スコールは怖い」だのと言われていた事も知っている。それは自分にとってある一面とても都合が良かった。そう思われていれば誰からも余計な干渉は受けなくて済むし、何より戦う上で動きやすい。
万が一裏切り者が出たとしても、一番にそいつに自分が粛清を浴びせればいいとさえ思っていた。
しかし、彼女は違っていた。
少し遠巻きに見ていたかと思えば、何の衒いも躊躇いすらなく自分に近づき、自然にアシストをしてくれた。
決して押し付けではないその行動に、仲間を思いやる自然な言葉にスコールは気がつけば無碍に彼女を追い払う事ができない自分に気がついた。
そして彼女の傍にはいつもジェクトが居た。どうやら同じ世界から来たらしい二人はまるで実の親子のように自然に支えあっていた。
今回の探索も勿論ジェクトが一緒に居る。
そしてラグナの4人でひずみを開放し、「夢の終わり」で休む事になったのだった。
「なら、いいんだ」
軽く頬杖をつき、胡坐をかいた姿勢にすると、
「ティーダとは会えないのかな」
珍しくも、彼女のどこか弱々しい声が「夢の終わり」に小さく落とされた。
あたりには「幻光虫」と呼ばれる、これもジェクトが教えてくれたほのかな光がまるで蛍のように浮かんでは消えてを繰り返している。
初めてみた自分ですら「綺麗だ」と自然に感じたこの場所は、どうやら二人にとって苦い意味を持つようだった。
「カオスの、あいつの事か?」
「はい」
膝を強く抱え、遠くを見つめるような視線はいつものユウナとは程遠い。
「ジェクトの子供らしいな」
ジェクトが以前、ティーダと戦ったときはその場にユウナは居なかった。深手を負い、確か別の仲間に「聖域」まで運ばれていた筈だ。
そして、そのティーダと言う名のカオス軍の戦士である青年はジェクトの事を『親父』と呼んでいた。たった一度、青い美しい剣をジェクトの心臓目掛けて斬りかけるその瞬間の、彼の悲しみに包まれたような声は、スコールの耳にとても深く印象に残っていた。
今から考えればずいぶん前となっていたその記憶を手繰り寄せながらスコールが確認する。
返事の代わりに深く頷き、
「ティーダは私のいた世界で、私をずっと守ってくれていたんです」
大切そうに、秘密を打ち明けるかのように彼女が言葉を繋げる。
「でも、どうしてカオス側に・・・。ティーダは破壊を望んだりする人じゃないんです」
スコールの頭に先程から手繰り寄せていた記憶にあったジェクトの言葉がよぎる。
『ティーダの奴、カオス側に来ちまいやがった』
怪我を仲間の治癒魔法で塞ぎつつも、深手による熱で朦朧としていたユウナにもそれは聞こえてしまった。テントの中で治療を受けていた為、表情こそ怪我と熱によるものとして一部の者にしか見られる事は無かったが、その顔色はとても青ざめていた。
過去の戦いで少しずつ記憶をその手に掴んでいた彼女にとって、『ティーダ』の存在はまさに希望だった。
彼の遺してくれたもの、一緒に旅をしている間ずっと自分を、その心を守ってくれた事。
その『希望』と敵同士になるとは思いも寄らなかった。
それでも仲間の前ではしゃんと己の足で立つ彼女に、本当は酷くジェクトが心配していた。
その一件以来、なお一層ジェクトが彼女を守るようになっていた。
まるで、ティーダの不在を埋めるかのように。
いつもまわりを思い、羽ばたき続ける彼女に少しでも立ち止まる事の出来る『止まり木』となれるように。
「ごめんなさい、変な事を言っちゃいましたね」
スコールの「任務」に対する厳格さを、この探索を通してひしひしと感じてきたユウナが立ち上がろうとする。
「構わない。大事な奴なんだろう」
今度こそまっすぐにユウナを灰色の混じった青い瞳が捉えた。
ジェクトの行動、ユウナの言葉。それらが持つ意味を感じ取り、言葉にこそしないその気持ちを眼差しに込める。
(なら信じていればいい)
粗雑だが優しいあの男の息子なら、きっと彼女の思いも伝わるだろう。
この「任務」で自然と浮かぶようになっていた『信頼』への希望を心の中で呟く。
その眼差しはとてもあたたかく力強い。
「・・・・・・はい」
自分を守るように取り出していた杖を抱えて、少しだけ水分の多いオッドアイが笑う。
心の襞を感じ取る事に長けているのだろう、彼女の声は小さくもあたたかく、強い決意に満ちていた。
「スコールさんって優しいんですね」
ふわりと乗せられた言葉に一瞬言葉をなくしてしまったスコールに、
「今、「ティーダを信じればいい」っていってくれた気がしました」
「・・・別に」
ぷいっと顔を背けるも、
「ありがとうございます」
わずかに腰を屈めて、座り込んでいるスコールに感謝の言葉をかけたところだった。
「おはょ~、スコール」
大きなあくびをしながらラグナがよたよたとやってきた。
「おはようございます」
「ああ」
と、
「ユウナちゃんもおはよー。ってあれ?ユウナちゃん見張りだったっけ?」
女の子に見張りさせるほど俺ら厳しかったっけ~。と能天気な表情を見せるラグナに、
「あ、スコールさん仮眠とって下さい。まだ出発まで少し時間ありますから」
「な~にやってんだ、お前ぇらは」
スコールと一緒に見張りをしていたジェクトが周りの哨戒から戻ってきた。
「と、おいラグナ。起きたんならスコールと見張り替われ」
どすどすと大股で三人に近づき、そのままどっかりと座りこみ、
「とりあえずあたりには何にもいねぇがな。時間的には夜明けまで少し時間がある」
傭兵っつても体力勝負だろ?休めるときに休んどけ。
スコールの頭を乱暴にぐしゃぐしゃとかき混ぜる姿に、ちくりと胸を刺す印象を受けつつも、
「そうですよ、私達で準備しますから」
いつもの自然な気遣いを見せる彼女に、
「・・・・・・・・解った」
すっかり崩れてしまった髪を直し、再び彼女を見ればいつもの様子にすっかり戻っていた。
「ラグナ、毛布寄越せ」
「おう、ついでに寝かしつけてやろうか」
「要らん!」
「ラグナ、お前いい加減スコールに甘えるな」
もう少しで夜が明ける。
彼女が『希望』を目指して戦う道の先に、幸せな結果が繋がる事を信じて。
いつもの自分らしくない甘い願いを胸に落として、スコールはわずかな時間を休息に使う事にした。
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